2021 Fiscal Year Research-status Report
Study on very early diagnosis of Alzheimer's disease by brain structure network analysis
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21K07583
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Research Institution | National Center of Neurology and Psychiatry |
Principal Investigator |
松田 博史 国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター, 病院 放射線診療部, 非常勤医師 (90173848)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 認知症 / MRI / ネットワーク |
Outline of Annual Research Achievements |
グラフ理論におけるスモールワールド指数とは、クラスタリング係数(ランダムなグラフで予想される値で正規化)と平均最短経路長(これもランダムなグラフで予想される値で正規化)の比である。この指数は、脳内の情報伝達効率の指標として用いられる。本研究では、MRIを用いグラフ理論により解析された個人脳におけるスモールワールド指数と人間ドック受診者における検査項目との関連を解析し、認知症予防に役立てることを目的とした。【方法】27歳から89歳まで(平均60歳)の334人(男性189人、女性145人)を対象とした。MRIの3次元T1強調画像を用いて機械学習による脳年齢測定、VSRADによる側頭葉内側部の萎縮測定、および個人レベルでの構造ネットワーク解析を行い、身体測定、聴力測定、CTによる内臓脂肪および皮下脂肪測定、長谷川式認知機能スケールおよび血液生化学検査結果の合計55項目と全脳のスモールワールド指数との関連解析を部分的最小二乗回帰(Patrial Least Squares; PLS)を用いて行った。本研究は倫理委員会で承認を得て後方視的に行った。【結果および考察】全体、男性、女性にわけてPLS解析を行った結果、スモールワールド性に最も寄与する因子は、MRIにより測定した脳年齢であった。聴力(負の相関)、長谷川式認知機能スケール(正の相関)、HbA1C(負の相関)、VSRAD のZスコア(負の相関)、心不全の指標である脳性ナトリウム利尿ペプチド(負の相関)とも関連が高かった。聴力は低音よりも高音での低下が関連大であった。脳性ナトリウム利尿ペプチドは、認知症との関連が報告されており、その上昇は心臓、神経血管、神経変性の病因の組み合わせを反映していると考えられている。MRIによる構造ネットワーク解析は生活習慣の改善などに有用な情報を与えるものと期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
3DT1強調画像を用いた脳構造ネットワーク解析によるアルツハイマー病の超早期診断に関する研究において、本年度は人間ドック受診者におけるMRIの構造ネットワーク解析から認知症予防につながる生活習慣因子を解析した。構造ネットワーク指数の中でも脳の情報伝達効率を最も忠実に反映するスモールワールド性に注目した。スモールワールド性は認知機能検査スケールとの正相関がみられ、アルツハイマー病の早期診断にも有用性が確認された。また、このスモールワールド性に最も大きく影響したのは、MRIから推定した脳年齢であった。アルツハイマー病の最大の危険因子は加齢であり、暦年齢よりも脳年齢がよりスモールワールド性に影響することを発見したことは、認知症予防に大きな意義がある。また、聴力の低下、特に高音での聴力低下がスモールワールド性に影響することも、従来報告されていた認知症発症における聴力低下の影響を支持するものである。さらに、脳性ナトリウム利尿ペプチドとの相関も高くみられたことは、心不全予防も認知症予防に重要であることがわかった。現在、進行中であるアミロイドおよびタウ蓄積と構造ネットワーク指標の関連解析において、今年度の成果は重要な役割を果たすと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
現在、アミロイドPETとして11C-PiBおよび18F-NAV4694、タウPETとして18F-MK6240を用いてアルツハイマー型認知症疑いの患者に対してPET撮像を行っている。また、同時にMRIによる構造ネットワーク解析を行い、スモールワールド性を含めた全脳のネットワーク解析に加えBetweenness Centrality, Degree, Clustering Coefficient, Characteristic Path Lengthの個々のネットワークパラメータ画像を作製している。すでにこれらのネットワークパラメータ画像の1000例以上の健常者からなる政情データベースを作成しており、このデータベースと比較することにより個々の患者でのネットワーク異常を検出していく。さらにネットワーク解析のために、脳におけるアミロイド蓄積の定量化のために、センチロイドスケールを自動的に算出するソフトウェアを開発した。また、タウ蓄積を定量化する必要があり、センチロイドスケールに準じた定量法を開発する必要がある。このタウ蓄積の定量化は未だ確立した方法は報告されていない。アルツハイマー病におけるタウ蓄積は嗅内皮質に始まり、アルツハイマー病の進行にともない側頭葉から頭頂葉などの新皮質に進展していく。このことからタウ蓄積の定量には量的観点に加え空間的観点も考慮する必要がある。
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Causes of Carryover |
アルツハイマー型認知症疑い患者におけるアミロイドおよびタウPETならびに構造ネットワーク研究において、新規PETリガンドを合成し、PET薬剤委員会や倫理委員会での承認手続きなど臨床研究に供するまでの準備期間が必要であった。本格的にPETとMRIによる臨床研究が開始され、院内サイクロトロンを用いたPET薬剤などの消耗品および解析業務を含めた研究費用が次年度にも発生することとなった。
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Research Products
(7 results)