2021 Fiscal Year Research-status Report
Real-time visualization of radiation-induced intratumoral cell death and its application to radiation therapy
Project/Area Number |
21K07654
|
Research Institution | Kitasato University |
Principal Investigator |
鍵谷 豪 北里大学, 医療衛生学部, 准教授 (30524243)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小川 良平 富山大学, 学術研究部医学系, 准教授 (60334736)
|
Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | 放射線 / 細胞死 / リアルタイムイメージング / アポトーシス / ネクローシス |
Outline of Annual Research Achievements |
細胞死は,形態的特徴とその分子メカニズムからアポトーシス(Apo),ネクローシス(Nec)及びオートファジー細胞死の3つのタイプに分けられる。放射線や抗がん剤により腫瘍内で誘発されるこれら細胞死の動態解析には,腫瘍組織切片を測定時間毎に作製し評価する必要があり,その詳細な検討はほぼおこなわれていないのが現状である。このため,放射線や抗がん剤により腫瘍内で誘発されるこれら細胞死を低侵襲かつリアルタイムに可視化するシステムは,腫瘍内細胞死の動態解析を簡便にし,放射線治療条件の最適化および抗がん剤を併用した放射線化学療法の開発等,治療への応用に非常に有用な手段となる。これまでに我々の研究室では,腫瘍内で誘発されるApoとNecを低侵襲リアルタイムに可視化する細胞株の構築に成功している。2021年度,我々は,X線により腫瘍内で誘発されるApoのリアルタイムイメージングは可能か,また放射線に対し抵抗性である低酸素細胞領域においてもApoは誘発されるのか,構築したApo可視化細胞及び低酸素Apo可視化細胞を用い明らかにすることを目的とした。その結果,Apo可視化細胞を移植したマウス腫瘍にX線を照射した場合,非照射腫瘍と比較し照射された腫瘍の発光値は増強し,腫瘍内Apoのリアルタイム可視化に成功した。また,その相対発光値(照射腫瘍の発光値/非照射腫瘍の発光値)は照射9時間後に最大となり,その後経過時間と共に減少することが判明した。腫瘍内低酸素細胞に関しても,照射された腫瘍の発光値は非照射腫瘍側と比較し有意に高い値を示し,放射線に対し抵抗性である腫瘍内低酸素細胞においてもApoが誘発されることを明らかにした。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
X線照射によるアポトーシス(Apo)可視化には,腫瘍内部の酸素濃度に関係なくApoを可視化するシステム(Apo可視化細胞),及び低酸素細胞のみのApoを可視化するシステム(低酸素細胞Apo可視化細胞)をホタル由来ルシフェラーゼを用い構築した。これらシステムを発現するApo可視化細胞および低酸素Apo可視化細胞をヌードマウスに移植し,腫瘍を形成後,腫瘍にX線20 Gyを単回照射し,高感度CCDカメラを用い腫瘍内Apoのリアルタイム可視化を試みた。両Apo可視化細胞共に,非照射腫瘍と比較し照射された腫瘍の発光値は増強し,腫瘍内Apoの可視化に成功した。また,その相対発光値は照射9時間後に最大となり,その後経過時間と共に減少した。しかし,これらApo可視化細胞を用いたin vitro実験においては,X線照射により発光増強は認められなかった。培養液をPBSに置換し細胞への栄養を枯渇した場合,Apo誘発による発光増強が認められた。放射線による腫瘍血管損傷が,腫瘍内Apoを誘発していると考えられたため,腫瘍血管の損傷が起こりにくい5 Gy以下の線量でX線単回照射をおこない発光値比較をおこなった。その結果,照射側の発光値と非照射腫瘍側の発光値に有意な差は認められなかった。これらの結果から,高線量X線照射により腫瘍内で誘発されるApoは,細胞自身が持つ放射線感受性のみで決定されるものではなく,組織を構成する腫瘍血管の損傷による細胞への栄養供給の低下も,細胞致死効果を決定する大きな要因であることが示唆された。
|
Strategy for Future Research Activity |
エビ由来ルシフェラーゼ(Luc)を基本骨格としたネクローシス(Nec)可視化システムを構築し,これまでに腫瘍への針刺し,または組織溶解試薬を注入した物理的および化学的破壊により腫瘍内で誘発されるNecの可視化に成功している。しかし,このシステムはin vitro実験では高い発光値を示すが,マウス腫瘍を用いたin vivo実験では腫瘍への発光基質フリマジンの直接注入のみで発光し,尾静脈投与(IV)または腹腔内投与(IP)では腫瘍内Necの可視化には至らなかった。この原因は,発光基質フリマジンが体内で急速に分解されることに起因すると考えられた。間質圧の高い腫瘍への発光基質直接注入は限局的であり,腫瘍全体で誘発されるNecを定量的に判断することは難しい。このため,2022年度は生体内で比較的安定で分解されにくく,生体組織による自己吸収の少ない発光波長613 nm(赤色)で発光する基質Akalumineを用い,IVまたはIPによる腫瘍内Necの可視化を試みる。また,これまでに構築したシステムはAkalumineを基質としないため,Akalumineを基質とするホタル由来Lucを用いて赤色高発光型Nec可視化システムの再構築を試みる。この改良型Nec発光システムの波長は,Apo可視化システムの発光波長562 nm(黄緑色)と異なるため,同一腫瘍内ApoとNecの同時細胞死イメージングが可能になると考えられる。
|
Causes of Carryover |
使用額(B-A)は、ほぼゼロと等しい。次年度もまた、申請書に示した計画書どおりに研究を遂行する予定である。
|
Research Products
(5 results)