2023 Fiscal Year Research-status Report
拡散強調画像を用いた健常脳温度測定による生理的変動の解明と病的脳温測定の臨床応用
Project/Area Number |
21K07684
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Research Institution | Osaka Metropolitan University |
Principal Investigator |
下野 太郎 大阪公立大学, 大学院医学研究科, 准教授 (70340817)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
三木 幸雄 大阪公立大学, 大学院医学研究科, 教授 (80303824)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | MRI |
Outline of Annual Research Achievements |
脳温度は脳の神経活動に要する脳代謝を反映する重要なパラメーターとされている。近年、MRI(Magnetic Resonance Imaging:磁気共鳴画像)の拡散強調画像を用いて、脳温度を非侵襲的に簡便に測定する方法が開発された。 研究代表者(下野)らは、過去に本法を用いて健常女性の生理周期における体温と脳温度の変化と相関性について報告した。しかし、それ以外に健常者における体温と脳温度の関係は未だほとんど報告されておらず、これを明らかにすることが、疾患を有する患者群において脳温度を評価する際に重要な基礎データになると考える。 健常者において、生理的に体温は約1度程度の日内変動を来すとされ、朝方は低温期、夕方は高温期になるとされている。この体温の変動に伴って脳温度が変動するかどうかを、本研究では検討する。低温期の早朝と高温期の夕方の2回に、体温測定と脳温度測定のための頭部MRI撮像を行い、これらから健常者における体温と脳温度のデータを取集し、解析する。その後、中枢神経疾患を有する患者群における体温と脳温度のデータを収集・解析し、健常者群と患者群を比較して、その差異を明らかにして臨床応用を図ることを目的とする。 またアルツハイマー病などの認知機能異常を呈する疾患において脳温度が低下することが示唆されている。脳温度の評価はアルツハイマー病の診断や病態解明に補助的な役割を果たす可能性があるが、認知機能検査やアミロイドPETといったアルツハイマー病の診断において広く利用されているバイオマーカーや近年提唱されている脳実質内の髄液の流れとの関連は現時点で不明である。オープンソースデータを用いてアルツハイマー病患者と健常者を比較することでこれらの関連を調査する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
健常者において、体温は朝と比較して夕方の体温が有意に高値を示したが、脳温度は朝と夕方の間に有意差は認められなかった。一方で、男女で比較検討したところ、脳温度の日内変動は性別により異なる可能性が示唆された。これらの結果について、論文で発表した(Horiuchi D, Shimono T, et al. Neuroradiology. 2023 Aug;65(8):1239-1246.)。また、本研究結果を第59回日本医学放射線学会秋季臨床大会(2023/9/15-17, 徳島)にて発表を行い(堀内, 下野ら. )、優秀演題賞を受賞した。 アルツハイマー病患者において、脳温度、アミロイドPETの集積、拡散強調像より算出されるdiffusion tensor image analysis along the perivascular space (DTI-ALPS) index(脳内に蓄積した老廃物やタンパク質を除去するglymphatic systemと呼ばれるクリアランス機能の指標)の関連を調べたところ、脳温度とALPS indexに正の相関がみられた。これらの結果について英文誌 (Matsushita S, Shimono T, et al. JMRI. 2024 Apr;59(4):1341-1348.)、国際学会(2023 ISMRM & ISMRT Annual Meeting and Exhibition, 2023/6/3-8, Toronto)にて発表を行なった(Matsushita S, et al. The association of amyloid PET, metabolic brain MRI, and in Alzheimer's disease and normal controls: an OASIS-3 dataset analysis.)。
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Strategy for Future Research Activity |
今後、脳腫瘍(神経膠腫)のオープンソースデータを利用して、既に収集した健常者群でのデータも用いて、健常者群と疾患群での比較を検討している。また、脳腫瘍において脳温度が予後などにどのような影響を与えるかについても評価することを検討している。 また、同一被検者に対して同日内に複数回頭部MRI検査を施行したデータを用いた研究は少なく、脳温度以外の指標における日内変動に関する研究を検討している。近年、脳内に蓄積した老廃物やタンパク質を除去するglymphatic systemと呼ばれるクリアランス機能が注目されている。アルツハイマー病などの神経変性疾患ではglymphatic systemの機能が低下し、先述のALPS indexも低下することが報告されている。健常者において脳内のクリアランス機能が日内変動するか否かは、疾患群を評価する際の重要な基礎データになると考えられる。本研究で収集したデータを用いて検討した結果、健常者においてDTI-ALPS indexは有意な日内変動を示さなかった。この結果を第83回日本医学放射線学会総会(2024/4/11-14, 横浜)にて発表し(堀内, 立川, 下野ら. 健常者におけるDTI-ALPS indexの日内変動の評価)、今後はこのデータを元に論文での発表を検討している。
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Causes of Carryover |
研究をサポートして下さった方々への謝金、データ解析などにおけるデータ保存のためのパソコン、ディスクやハードディスク、解析や論文作成に必要なソフト、コピー用紙などの必要物品が、さらに、研究発表をする学会参加費、旅費、宿泊費、論文作成英文校正費・掲載料などが必要と考えられる。
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