2021 Fiscal Year Research-status Report
悪性中皮腫根治に向けて-ポドプラニン標的α線放射免疫療法と高精度線量評価法の開発
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21K07688
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Research Institution | National Institutes for Quantum Science and Technology |
Principal Investigator |
須藤 仁美 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 量子医科学研究所 分子イメージング診断治療研究部, 主任研究員 (10415416)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 放射免疫療法 / α線 / ポドプラニン |
Outline of Annual Research Achievements |
放射免疫療法は、がん細胞に高発現している抗原に対する抗体を治療用のラジオアイソトープで標識し、体内に投与する放射線治療法であり、高い抗腫瘍効果を示す。ポドプラニンは、様々ながんで高発現する抗原で、治療の分子標的として注目されている。我々は、β線放出核種Y-90で標識した抗ポドプラニン抗体を、腫瘍モデルマウスに投与し、重篤な副作用なしに高い治療効果が得られる事を示した。この事から、この抗ポドプラニン抗体が「がん細胞だけを放射線で攻撃する治療」を可能にする事が示唆された。本研究では、この抗体をβ線よりも高い細胞障害性をもつα線放出核種Ac-225で標識し、腫瘍モデル動物を用いて体内動態や治療効果、副作用を評価し、α線放射免疫療法でも「がん細胞だけを放射線で攻撃する治療」が実現可能であることを示すことを目的とする。 当該年度は、中皮腫由来細胞をマウス皮下に移植したモデルを用い、Ac-225標識抗ポドプラニン抗体の体内動態を評価した。このデータをもとに腫瘍および正常臓器への吸収線量を算出し、治療実験に用いる225Ac-標識抗体の投与量を決定した。決定した量を、皮下腫瘍モデルマウスの尾静脈より投与し、抗腫瘍効果および副作用の評価を行なった。Y-90標識抗体の抗腫瘍効果が一時的だったのに対し、Ac-225標識抗体は56日間の観察期間中、高い抗腫瘍効果を示した。腫瘍体積をもとにした生存曲線では、Ac-225標識抗体は、有意な生存期間の延長を示した。Ac-225標識抗体の投与により、一時的な体重減少が観察されたが、その後増加した。また、脾臓、腎臓、肝臓、骨髄にAc-225の投与による影響は見られなかった。以上のことから、α線放射免疫療法でも「がん細胞だけを放射線で攻撃する治療」が実現可能であることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
225Ac標識抗ポドプラニン抗体は皮下腫瘍モデルにおいて重篤な副作用なしに高い治療効果を示した。この内容を査読付き論文に発表した。
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Strategy for Future Research Activity |
胸腔内腫瘍モデルを構築し、α線による放射免疫療法の治療効果と正常組織への影響を評価する。まず、ルシフェラーゼを安定的に発現する中皮腫細胞を構築し、胸腔内腫瘍モデルを確立する。このモデルにAc-225で標識した抗ポドプラニン抗体を投与し、標識抗体の体内動態を調べ、このデータを元に腫瘍および正常臓器の吸収線量を算出する。投与方法(尾静脈注射と胸腔内投与)による体内動態や吸収線量の違いの検討を行う。さらに、それぞれの投与方法による治療効果や副作用について検討を行う。
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Causes of Carryover |
新型コロナウィルス感染拡大のため、予定していた学会に参加しなかったため。
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Research Products
(2 results)