2021 Fiscal Year Research-status Report
放射線障害に関わる遅発性活性酸素と核外シグナルの機構解明
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21K07736
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Research Institution | Nara Medical University |
Principal Investigator |
菓子野 元郎 奈良県立医科大学, 医学部, 准教授 (00437287)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 活性酸素 / マイクロビーム / LET |
Outline of Annual Research Achievements |
放射線治療における正常細胞の保護に役立てる目的で、遅発性活性酸素に着目して研究を進めている。遅発性活性酸素の生成とそれによる細胞障害誘発の機構解明のため、計画通りに複数の実験を実施した。 まず、高エネルギー加速器研究機構(KEK)の放射光マイクロビームによる実験では、核のみ照射と細胞全体照射によるDNA二本鎖切断誘発を比較した。その結果、先行研究の結果と同様、核のみ照射では細胞全体照射に比べて、DNA二本鎖切断部位に集積するリン酸化H2AXのレベルが弱いことがわかった。また、ATMリン酸化のフォーカスもリン酸化H2AXと同様に核のみでは弱いシグナルであることを確認できた。核外(細胞質)照射については、条件検討を行い、HE49細胞では40x40umの四角形で放射光を入射し、中心の22um径の遮へいで核を照射しない条件を確立し、150~200個の細胞に3Gy照射し、照射後すぐに細胞をはがし、コロニー形成する方法を確立した。 HIMACにおける炭素線照射実験では遅発性活性酸素の生成機構についてLET依存性を調べた。その結果、LETが高い(72-74keV/um)炭素線照射では、LETが低い炭素線やX線照射時と比べて、同じ吸収線量であっても遅発性活性酸素の生成が多くなることが分かった。DNAクラスター損傷のような高LET放射線による障害性は遅発性活性酸素の生成にも関わる可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画書に記載した令和3年度の実験計画では、マイクロビームの実験で核のみ照射、細胞全体照射、核外照射の3種の照射条件を確立することを考えていたが、おおむね計画通り達成できたといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画通り、マイクロビームによる実験を進める。令和3年度に確立した実験条件を用いて、ATM-p53のシグナル経路に遅発性活性酸素が関わることを解明する予定である。
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Causes of Carryover |
消耗品費の購入のうち、培地、フラスコなどの使用数量が予定より少なかったため、残額が生じた。研究計画では令和3年度から4年度にかけて同様の実験をする予定であるため、令和4年度に残額分を消耗品費の購入にあてる予定である。
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