2023 Fiscal Year Annual Research Report
放射線障害に関わる遅発性活性酸素と核外シグナルの機構解明
Project/Area Number |
21K07736
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Research Institution | Nara Medical University |
Principal Investigator |
菓子野 元郎 奈良県立医科大学, 医学部, 准教授 (00437287)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 活性酸素 / マイクロビーム / ATM |
Outline of Annual Research Achievements |
2023年度においては、遅発性活性酸素による細胞障害性とその機構の解明のための実験を計画通りに実施できた。 高エネルギー加速器研究機構(KEK)の放射光マイクロビームによる実験では、細胞核のみ照射(25x25umの範囲)による細胞生存への影響を調べる実験を実施し、遅発性活性酸素が生存率へ及ぼす影響を調べた。3Gyを核照射した結果、生存率は約30%に低下したが、遅発性活性酸素を除去する2.5mM AA2G(アスコルビン酸2グルコシド)を照射後のコロニー形成時に処理することにより、生存率上昇が認められた。細胞全体照射でもAA2G処理により生存率が増加することから、核におけるDNA損傷を起点とする細胞障害において、遅発性活性酸素が関与していることを示唆している。 また、遅発性活性酸素がATMの活性化を介して突然変異の誘導に関わる可能性について調べた。当初の計画ではミトコンドリアにおけるDrp1の活性化に着目する予定であったが、マイクロビームの結果より、核由来のシグナルと遅発性活性酸素の関係を調べることが重要であると判断したため、変更することにした。その結果、遅発性活性酸素を除去するAA2G処理やATM活性化を抑制するKU55933を処理することにより、突然変異の頻度はあまり変化しなかったが、6Gy照射後に大きな欠失を持つ突然変異に着目すると、両者は抑制することが分かった。この結果より、放射線照射後の複製ストレスが遅発性活性酸素やATM活性化を介して引き起こされるため、欠失型突然変異が誘導する可能性が示唆された。
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