2021 Fiscal Year Research-status Report
自閉症病態モデル動物における硫酸化糖鎖の役割と新規治療標的としての可能性検討
Project/Area Number |
21K07760
|
Research Institution | Dokkyo Medical University |
Principal Investigator |
山内 忍 獨協医科大学, 医学部, 助教 (70433589)
|
Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | 硫酸化糖鎖 / プロテオグリカン / 硫酸基転移酵素 / 脳微小環境 / グリア細胞 / 自閉症 / 神経炎症 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、患者数が増加傾向にある自閉症の病態形成にミクログリア活性化の関連が示唆されている。活性化型ミクログリアは神経系に対して傷害性と保護性を示す形質があり、各形質のバランスが神経炎症性の病態形成に関連していると考えられている。一方、研究代表者が注目する硫酸化グリコサミノグリカン(GAG)糖鎖は、硫酸化修飾構造の違いに基づき中枢神経系の細胞機能を制御しているが、ミクログリアにおける役割については不明な点が多い。そこで、本研究では活性化型ミクログリアの関連が示唆される自閉症の病態形成にGAG糖鎖構造の変化が関与する可能性を検証するため、自閉症モデル動物脳と正常対照動物脳のそれぞれのミクログリアに発現するGAG糖鎖構造の質的・量的変化の有無を明らかにすることを目的としている。 本年度は、まず自閉症モデル動物の作製をおこなった。本研究では、先行研究で実績のある、妊娠ラットへのバルプロ酸投与による方法を用いて、バルプロ酸投与妊娠ラットが出産した仔ラットを自閉症モデルラットとして活用した。次に自閉症モデルラットについて、シナプス形成、およびシナプス刈り込み期、成熟期初期、成熟後と発達段階を分けて脳組織標本を作製し、活性化ミクログリアの形質マーカー分子の発現様式とGAG糖鎖やプロテオグリカン分子(GAG糖鎖で修飾されたタンパク質分子であり、GAG糖鎖部分がPG分子の生物機能を決定する)の発現様式をそれぞれの特異抗体を用いた免疫組織染色法で検討することを試みた。現在、活性化型ミクログリアの発現・分布変化とそれに連動したGAG糖鎖やPG分子の発現・分布変化の有無について解析中である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究以外の業務に時間を取られたこと、同居家族の新型コロナウイルス感染に伴う濃厚接触者となり、長期間にわたり出勤制限されたことなどにより、解析に用いる自閉症モデル動物作製の着手が遅れてしまった。それに伴い、本年度中の実施を想定していた解析にも遅れが生じてしまったため、当初の計画よりやや遅れていると判断した。
|
Strategy for Future Research Activity |
次年度の計画としては、まず初年度に遅延した解析を完了させた後、当初の研究計画に従い解析を展開していく。すなわち、正常対照ラット脳、および自閉症モデルラット脳由来のミクログリア培養系から細胞抽出液を採取した後、抗硫酸化グリコサミノグリカン(GAG)糖鎖抗体や抗プロテオグリカン抗体を用いたウエスタンブロット分析、GAG糖鎖組成分析などをおこない、それぞれの細胞が発現するGAG糖鎖の発現量と構造に違いがあるかどうかを調べる。しかし、GAG糖鎖組成分析は細胞から得られる検体の絶対量の少なさから解析に困難が予想されることから次の方法も検討する。GAG糖鎖の特徴的な糖鎖構造の生合成過程には多くの糖鎖修飾酵素が関与しており、その経路が明らかにされている。そこで、正常対照ラット脳、自閉症モデルラット脳の各ミクログリアについて、糖鎖修飾酵素の遺伝子発現プロファイルを定量的PCR分析で調べる。両者間で顕著な遺伝子発現変動を示す修飾酵素を検索することで、自閉症モデルラット脳由来ミクログリア活性化の制御に関与する糖鎖構造合成経路と、その構造形成の鍵となる修飾酵素を特定する。
|
Causes of Carryover |
本年度の研究計画に含めて想定していた一部の解析実施に遅れが生じたことにより当該解析に関わる研究費支出が減少したことや、試薬や器具などの消耗品について、できる限り低価格の物品購入に努めたことから当初の計画よりも使用金額が下回り、次年度使用額が生じた。 本年度使用予定であった研究費用の残額を次年度に繰り越して研究計画遂行のために使用する。具体的には、現在解析中の免疫組織学的解析に必要な免疫組織化学用試薬や抗体、次年度に実施を計画しているミクログリア培養に必要な細胞培養用試薬とそれを用いた遺伝子発現解析やタンパク質発現解析に必要な試薬、そして実験器具などの消耗品の購入に使用する予定である。
|