2021 Fiscal Year Research-status Report
ヒト神経組織と喘息マウスを用いた急性弛緩性脊髄炎の病態解明と予防・治療応用
Project/Area Number |
21K07799
|
Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
松重 武志 山口大学, 医学部附属病院, 講師 (60528941)
|
Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | 急性弛緩性脊髄炎 / エンテロウイルスD68 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年2回の流行が報告された小児の急性弛緩性脊髄炎は、ポリオ類似の麻痺症状を呈し、同じエンテロウイルス属のエンテロウイルスD68が原因の候補とされているものの、直接的な証明はされていない。また、基礎疾患として喘息要因をもつ宿主に急性弛緩性脊髄炎が発症しやすいことが知られている。本研究では、手術時に得られたヒト神経組織を用いた病因解明を行うとともに、喘息感作による新規の急性弛緩性脊髄炎モデルマウスを作成し、病態に即した予防法および治療法の確立を目指す。 1)手術時の神経検体および臨床情報を集積し、病理学的、ウイルス学的検討を行った。対象は神経移行術を受けた2018年流行時発症の急性弛緩性脊髄炎患者14例。臨床検査での検出ウイルスはエンテロウイルスD68が6例、コクサッキーウイルスAが3例だった。免疫染色を行った検体の一部でエンテロウイルスD68陽性が示唆されたが、必ずしも臨床検査と一致しなかった。このことから、ヒト神経組織に対して免疫組織化学的手法以外も含めて、複数のウイルスを同時に検討する必要が考えられた。 2)過去に報告された急性弛緩性脊髄炎マウスモデルは乳飲みマウスに限られるが、マウスの種類、ウイルス株、ウイルス感染経路やウイルス量は様々である。ヒトと同じ経気道的感染による急性弛緩性脊髄炎マウスモデルの確立のため、過去の手法の異なるモデルを参考としつつ、当研究室での喘息マウス作成方法を組み合わせた、最適な条件を検討中である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
ヒト神経組織に対する網羅的ウイルス解析を検討しているが、次世代シーケンサーを外部委託するにあたり、検体の条件や予算の問題、新型コロナウイルス流行等の影響による納期の遅れなどが生じた。 マウスモデル作成においては、乳飲みマウスの確実な処置や喘息感作を行うための週齢条件の難しさが実験に影響し、また研究施設の移転等による環境の変化の影響を受けた。
|
Strategy for Future Research Activity |
ヒト神経組織に対してPCRやメタゲノム次世代シーケンサーを含めてさらなる検討を行い、急性弛緩性脊髄炎の原因ウイルスを特定する。 モデルマウス作成においては、保有ウイルス株での乳飲みマウスの感染成立、急性弛緩性脊髄炎発症、評価法等を確実にし、次いで、喘息感作週齢、ウイルス感染経路、ウイルス量等を割り振って、喘息マウスでの非新生児期の急性弛緩性脊髄炎発症の確認を行う。
|
Causes of Carryover |
次世代シーケンサー検査委託費が大きかったため、分割して検査を行うより、次年度と合算して同時に検査を行い、経費を節約する予定としたため。
|