2023 Fiscal Year Annual Research Report
ヒト神経組織と喘息マウスを用いた急性弛緩性脊髄炎の病態解明と予防・治療応用
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21K07799
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
松重 武志 山口大学, 医学部附属病院, 講師 (60528941)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 急性弛緩性脊髄炎 / エンテロウイルスD68 |
Outline of Annual Research Achievements |
急性弛緩性脊髄炎は新興感染症として注目されており、エンテロウイルスD68が原因の候補とされているが、ヒト神経組織での直接的な証明はない。この研究では手術時に得られたヒトの神経組織を用いて病因解明を試みるとともに、喘息感作による新規急性弛緩性脊髄炎モデルマウスの作成を目指している。 手術時の神経検体と臨床情報を集積し、神経移行術を受けた患者23例からの検体でエンテロウイルスD68やコクサッキーウイルスが急性期に検出されたことを確認したが、エンテロウイルスD68に対する免疫染色との不一致があり、複数ウイルスの同時検討が必要だと判断した。 次世代シーケンサーを用いたウイルス検出では、凍結保存検体のある11例でRNAseqによる網羅的なウイルス検出を行い、エンテロウイルスD68、A71、コクサッキーウイルスA4等が検出されたが、環境中のウイルスも多く見られた。そこで、89種類の病原性ウイルスを検出できるキットを用いた結果、コクサッキーウイルスA12、B3等が検出されたが、やはりRNAseqの結果とは必ずしも合致しなかった。RNAの断片化やコンタミネーションの影響が推測される。 新規マウスモデルの試みでは、まずはエンテロウイルスD68保有株を用いた乳飲みマウスでのモデル作成を行い、複数のウイルス量、投与経路、マウス週数で試行した。一部で軽度の麻痺が見られたが、完全な弛緩性麻痺は生じず、頻度も低かった。病理学的に感染状況を確認しつつ、効率の良いモデル作成条件を検討している。さらに喘息感作、経気道感染を取り入れた条件下で、ヒトの病態に近く治療介入検討のしやすい、成熟マウスの急性弛緩性脊髄炎モデルを作成できるか検討していく。
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