2021 Fiscal Year Research-status Report
ヒト型受容体介在性トランスサイトーシスを利用したライソゾーム病遺伝子治療法の開発
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21K07808
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Research Institution | Jikei University School of Medicine |
Principal Investigator |
松島 小貴 東京慈恵会医科大学, 医学部, 助教 (80451871)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
嶋田 洋太 東京慈恵会医科大学, 医学部, 講師 (20560824)
小林 博司 東京慈恵会医科大学, 医学部, 教授 (90266619)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 遺伝子治療 / ライソゾーム病 / AAV / MPSII / GM1ガングリオシドーシス |
Outline of Annual Research Achievements |
ライソゾーム病の一つであるGM1ガングリオシドーシスは、βガラクトシダーゼ(βgal)を発現する遺伝子の変異により、基質が神経細胞、骨細胞に蓄積し中枢神経症状、骨症状を呈する。現在有効な治療法はなく、乳児型では発症から数年で死亡する。 本研究では脳血管内皮細胞に発現しているトランスフェリン受容体 (TfR)に対する抗体とβgalを融合し、中枢神経障害への遺伝子治療薬の開発を行っている。遺伝子導入方法としてはアデノ随伴ウイルス (AAV:adeno-associated virus))ベクターを用い、GM1ガングリオシドーシスの疾患モデルマウスにおける治療効果の検討を行った。TfR抗体に関してはヒトへの応用を考え、最終的にはヒトTfR抗体を利用するが、まずはマウスTfR抗体を用いて基礎実験を行った。 TfR融合βgalを発現するAAVを導入したマウスの脳において、βgalのみを導入した群と比べ基質の蓄積が減少し、導入量によっては正常マウスと同程度まで減少し、劇的な治療効果が認められた。しかし、AAVを高力価でマウスに導入すると、高発現したTfR融合酵素によりHGBが低下し、脾臓が肥大する貧血様症状が確認された。そのため、様々な投与量を設定し、副作用と治療効果の検討を加えた。それにより、HGBを経時的に測定することで治療効果が期待されかつ副作用の出ない投与量を設定した。今後は設定した投与量において脳、末梢組織における蓄積物質の変化、および行動学的解析を行うことで治療の最終的な評価を行なっていく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では2つのライソゾーム病、MPSIIおよびGM1ガングリオシドーシス(GM1)に対する遺伝子治療を検討する予定であった。MPSIIに関しては当該研究室でマウスTfR抗体を用いて先行研究が行われており、ヒトTfR抗体を用いた検討がすぐにでも可能であったが、大臣確認申請が必要であったヒトTfRノックインマウスの供給が当初の予定より大幅に遅れたため一時中断せざるを得なくなった。 一方でGM1に対しては当該研究室でも初の試みであったため、まずはマウスTfR抗体を用いた遺伝子治療の検討を進めた。その際、投与するAAVの量によってはマウスで貧血が認められ、更に脾臓の肥大も確認された。そこでTfR抗体の過剰発現による副作用を調べるため、新たに投与後のマウスのHGB等血液検査の項目を加え、試験後の肝臓脾臓および胸腺を病理解析することで髄外造血の検査を行った。 以上より、本研究は概ね順調に進展しているが、予期せぬ副作用等が認められたため、その対応も行っている。
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Strategy for Future Research Activity |
MPSIIに対する検討においては、昨年度中に大臣確認申請を行ったため、本年度は当該マウスを用いた治療の解析を行うことが可能となる。すでに準備は完了しているため、マウスを入手次第遺伝子治療を開始し、まずは短期効果の検討を行う。具体的には治療後適宜血中酵素活性を測定し、1ヶ月後の脳および末梢臓器における蓄積物質の定量を行い治療効果を評価する。 GM1に対する検討においては、昨年度副作用と治療効果の検討を行うことで適切な投与量を設定した。本年度はその投与量を用いて治療の長期効果を検討する。具体的には治療後適宜血中酵素活性およびHGBを測定し、6週ごとに行動試験(rotarod試験)を行う。治療後32週で行動試験(open field試験)を行った後、脳および各臓器における蓄積物質の定量を行う。また脳各部位における免疫染色による解析を行い治療による炎症反応等の変化を評価する。
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Causes of Carryover |
本年度設備備品費として計上していたものを他の研究費で購入したため次年度使用額が生じた。消耗品費はおおむね予定通り使用した。 しかし、遺伝子治療における予期せぬ副作用が認められたため、次年度は新たな動物実験および病理解析等に費用がかかることから本年度の研究費と合わせて使用する。
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