2021 Fiscal Year Research-status Report
Identifying drug targets for neuropsychiatric and neurodevelopmental disorders via brain transcriptome
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21K07820
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
野村 淳 神戸大学, 医学研究科, 助教 (70406528)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 神経発達症 / シングルセル解析 / 自閉症 / 統合失調症 / コピー数多型 / 染色体操作 / ヒトES細胞 / 神経発達 |
Outline of Annual Research Achievements |
ヒトES細胞(KhES-1)をベースにゲノム編集により作製した1q21.1染色体領域欠失/重複細胞(アイソジェニックセル)を用いて,本染色体領域の中枢神経系,特に神経発達における影響に焦点を絞り解析を実施した.約1メガベースに及ぶ本領域の欠失は神経発達症である自閉症と有意な遺伝的相関が認められ,これとは逆に重複は統合失調症との相関が認められている. 本研究は1q21.1領域の欠失もしくは重複を有するヒトES細胞を用いて神経分化を実施,神経細胞とともに分化過程で得られるグリア細胞,神経前駆細胞,神経幹細胞もカバーする事で,CNVを有する中枢に存在する全細胞種の表現型同定を試みる. これまで我々は,神経幹細胞が多く占めるスフェロイド培養系実験において,欠失細胞はコントロールに比べ径が小さくなる一方,重複細胞は大きくなる傾向を認めている.今回,細胞増殖の分子マーカーである抗リン酸化ヒストンH3(pHH3)抗体を用いた細胞免疫染色から,重複細胞ではpHH3シグナルの顕著な増加を認めた一方,欠失細胞はコントロール細胞との間に顕著な差は認められなかった.また,欠失細胞は,細胞の径がコントロールに比べ小さい傾向がある事から,細胞死の亢進が推測された.そこでアポトーシスのマーカーであるCleaved Caspase-3のシグナルをウエスタンブロットにより解析したが,サンプル間でばらつきが大きく,結論は出せなかった.今後,サンプルを増やす事で最終的な結果を得たい.同時にTUNEL assay等,他のアポトーシスのアッセイも含めて解析を行う予定である.一方,2Dの神経分化においては1q21.1欠失細胞でGABA作動性神経細胞のマーカー遺伝子の発現亢進が認められた.1q21.1領域のコピー数変異による表現型は中枢神経系における興奮性/抑制性神経細胞の存在比アンバランスに起因する可能性が示唆される.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
ヒトES細胞からの大脳皮質神経細胞の2D分化実験において,アストロサイト,繊維芽細胞と見られる非神経系細胞のコンタミネーションが多く見られた事から,神経分化実験プロトコールの全面的見直しを行った.複数の神経分化条件の検討を行う事で,最終的には適切な条件を決定する事ができた.一方,条件を決定するまでに多くの時間を要した.一般的にヒトES細胞を用いた神経分化プロトコールは,マウスの分化系実験と比べ,結果が得られるまで時間を要する事から,当初の予想以上に系の確立に時間を費やす事となった.しかし,最終的には,神経分化に用いる試薬のバランス,特に非神経系細胞の増殖を抑制する試薬の濃度をコントロールする事で安定的に成熟神経細胞を得る事ができるようになった.なおバックアップの実験として,他のグループから報告されたレンチウィルスによる(tet依存的Neurogeninの発現)2D神経分化プロトコール(Zhang et al., Neuron, 2013)も同時並行で実施した.後者に関しては特にトラブルもなく系を立ち上げる事ができている.
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Strategy for Future Research Activity |
今回,既存の神経分化プロトコールを一部改変する事で,再現性が高い神経分化プロトコールを樹立する事ができた.今後,本プロトコールを用い,2D神経分化実験を推進する予定である.特に,今年度以降は,微小電極アレイ(MEA: Multi Electrode Array)を用い,各遺伝型細胞における神経細胞の電気活動を解析する. これまでの我々は,ニューロスフェアーを用いたシングルセル解析から,1q21.1欠失細胞がGABA作動性神経細胞に分化し易い傾向を認めている.自閉症等の神経発達症では,興奮性と抑制性神経細胞のアンバランスが信頼しうる表現型の一つとして認められており,実際疾患表現型の基盤となっている可能性がある.従って,今後MEAを用る事で,神経分化後の成熟神経細胞集団におけるGABA作動性神経細胞の影響(E/Iバランス:興奮性と抑制性神経細胞のバランス)をGABA受容体の阻害剤であるBicuculline等も用いながら,神経薬理・生理学的に解析を進める. ニューロスフェアーを用いたシングルセル解析においても,幼弱神経細胞を含め複数の細胞集団を認めており,今後さらに細胞種ごとに疾患との相関解析を進めていきたい.特にE/Iバランス異常との相関が高い「てんかん」との関係性に着目し,Gene Set Enrichment Analysis (GSEA)等を含めた包括的な発現解析を進めたい.
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Research Products
(4 results)