2021 Fiscal Year Research-status Report
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21K07852
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
川村 順平 鹿児島大学, 鹿児島大学病院, 医員 (70838656)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
上野 健太郎 鹿児島大学, 医歯学域鹿児島大学病院, 講師 (20644892)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | micro RNA |
Outline of Annual Research Achievements |
VEGF, HGFなどの血管新生因子に関連したmicro RNA(miRNA)の既報が多く存在する。そこで、まず同一患者血清で肺動静脈瘻(PAVF)発症時とPAVF改善後で発現の差異があるmiRNAの網羅的解析をHuman miRNA Oligo chipのmicroarray解析で行い、PAVF発症時すなわちGlenn手術後に特異的に上昇している7つのmiRNAがリストアップされた。次に、別のPAVF発症時、PAVF改善後の患者血清を用いて、抽出それぞれreal time RT-PCR法を行うと、PAVF発症時の血清でmiR-25-3p, miR-125a-3pで発現が亢進していた。miR-25-3p, 125a-3pはその内在する細胞のmRNAを制御していることが考えられるため、細胞内のmiRNA realtime RT-PCRを行うと、Macrophageは、ヒト単球系白血病細胞株 (THP-1) をホルボール-12-ミリスタート-13-アセタート (PMA) で刺激して分化させたMacrophageにおいてmiR-25-3pの発現が亢進していた。Macrophageに低酸素刺激後のWesternblotを行うとHIF-1αの発現が亢進しており、miR-25-3p mimicをtransfectionさせたMacrophageではHIF1-αの発現がより亢進していた。HIF1-αの高発現はVEGF, HGFなどを誘導し肺血管内皮細胞における血管新生促進因子として働いている可能性がある。一方でGlenn術後で肝臓由来因子の欠乏からPAVFが発症するというこれまでの定説を考えると、肝臓の血管新生に関わる細胞Hepatocyteに着目した。miR-25-3pを高発現させた肝細胞細胞株 (Hepatocyte cell line, THLE-2) の低酸素曝露下の上清で刺激したヒト臍帯静脈内皮細胞 (HUVEC) ではVEGF下流シグナルのERK, Aktのリン酸化が低下しており、Glenn術後の肝臓由来の因子、すなわち、細胞増殖、血管新生を抑制する因子の欠乏もPAVF発症に関わっている可能性も示唆される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
血管新生促進因子であるVEGFやHGF、その産生を促す転写因子であるHIF1-αの発現を調整しているmiRNAにアプローチを行ったが、発症時と軽快した後の患者血清で比較することで影響のある可能性があるmiRNAをarrayで抽出し、さらに他患者も含めたrealtime RT-PCRで標的となっているmiRNAに絞り込むことに成功している。絞り込んだmiRNAは既報では血管新生、細胞増殖、細胞生存に関わっていることから、Glenn術後のPAVFの病態に絡んでいる可能性はある。PAVF患者と同様の低酸素曝露下では、Macrophageは高発現したHIF1-αがVEGFやHGFを産生を誘導することで、内皮細胞の血管新生を促進する働きがある。低酸素曝露下の肺内の肺胞Macrophageにおいても同様のことが言えると考えられる。PAVF患者では、miR25-3pの過剰な産生により、HIF1-αの発現を増加させ、VEGF, HGFなどの血管新生誘導因子の発現を亢進させることから、肺内における内皮細胞の異常な血管新生亢進を引き起こしPAVFの発症に影響しているのではないかと考える。一方で、肝臓由来のHepatocyteへもmiRNAが影響していることがわかり、Glenn術後のPAVFの解剖学的な特徴を踏まえた研究ができているのではないかと考える。これらの実験を繰り返し行っており、再現性も得られている。
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Strategy for Future Research Activity |
miRNAをtransfectionさせたMacrophageにおいては、肺内に特異的な肺胞Macrophageを購入して使用することで、同様の結果となることを確認する必要がある。また、Macrophageには炎症惹起型のM1 macrophageと炎症抑制型のM2 Macrophageがあることが知られており、低酸素曝露下では肺胞MacrophageがM2への分化が促進されることが知られている。MacrophageはIL-4刺激によりM2 Macrophageに分化できることから、分化を行いmiRNAを高発現した状態または、高発現したことよる内皮細胞への細胞間伝達を確認する必要がある。 Hepatocyte cell lineを用いた実験では、低酸素曝露下でmicro RNAを高発現させて、その上清またはExosomeを用いて内皮細胞との細胞間伝達を確認する必要がある。Exosomeは超遠心法を用いて抽出する。刺激された内皮細胞の血管新生が低下するのであれば、その介在している蛋白を特定する必要がある。HGFや他血管新生を抑制する蛋白が関係している可能性がある。また、刺激だけではなく共培養システムで細胞間伝達を確認する必要がある。細胞はHUVECだけでなく、ヒト肺動脈微小血管内皮細胞 (HPMEC) を用いて同様の実験を行う。内皮細胞の細胞増殖、血管新生だけでなく、抗炎症効果や抗アポトーシスについても同時に検討していくことが重要であると考える。
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