2023 Fiscal Year Research-status Report
血友病A患者・保因者の第Ⅷ因子遺伝子型に基づく病態解析と新規個別化治療戦略の開発
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21K07856
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Research Institution | Nara Medical University |
Principal Investigator |
矢田 弘史 奈良県立医科大学, 医学部附属病院, 研究員 (30635785)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
野上 恵嗣 奈良県立医科大学, 医学部, 教授 (50326328)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 血友病 / 保因者 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、血友病患者及び保因者を対象とし、全血凝固機能やトロンビン生成能などの凝血学的特性の解析を行い、遺伝子型と凝血学的特性に基づく病態やインヒビター発生機序を解明し、新規個別化止血治療戦略の確立を目指す。 本年度は、主に血友病保因者の凝固機能の解析を進行した。 血友病A確定保因者(n=52)のFVIII:C中央値(四分位範囲)は、57.7(21.3-192)IU/dLで、推定保因者(n=38)FVIII:C 66.3(7.8-171.4)IU/dLと明らかな差はなかった。また出血症状の有無とFVIII:Cに統計学的有意差は認めなかった。血友病B確定保因者(n=9)のFIX:Cは、23.9(7.6-76.6)IU/dLで、推定保因者(n=19)FIX:C 60.4(4.2-121)IU/dLに比して低値であったが、母数の影響と考えられた。出血症状の有無によりFIX:Cの差はなかった。血友病AまたはB確定保因者(または女性血友病患者)の凝固機能は、ROTEM上、軽症血友病A相当で、低濃度組織因子(TF)1pM存在下でのトロンビン生成試験(TGA)では、PeakThは正常対照の約33%に低下した。本測定条件下では、TGAパラメータは血友病A保因者・女性血友病A患者ではFVIII:Cとの相関はないが、血友病B保因者・女性血友病B患者では、PeakTh, ETP, ttPeakはFIX:Cと相関した。TF(0.5pM)と組織プラスミノーゲンアクチベータ(2nM)存在下でROTEMを用いて線溶能を測定・解析した結果、Lysis onset time (LOT)により、相対的に高線溶能群と低線溶能群に二分された。個々の症例における凝固機能及び線溶能の組み合わせに多様性がみられ、それらの均衡による出血リスクへの影響が考えられた。 これらの結果は第45回日本血栓止血学会学術集会にて公表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究代表者の研究機関異動に伴う体制の整備に時間を要したため
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Strategy for Future Research Activity |
研究体制の整備とともに、ひきつづき血友病患者、保因者の解析を進行し、成果の公表を順次行っていく。
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