2022 Fiscal Year Research-status Report
腎尿細管エンドサイトーシスを制御する転写調節システムの解明
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21K07861
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
張田 豊 東京大学, 医学部附属病院, 准教授 (10451866)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
神田 祥一郎 東京大学, 医学部附属病院, 講師 (60632651)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | Fanconi症候群 / HNF4a / 尿細管機能異常症 |
Outline of Annual Research Achievements |
糸球体で濾過された原尿中の様々な物質は腎近位尿細管で再吸収され、このプロセスの破綻はFanconi症候群を引き起こす。転写因子HNF4αをコードするHNF4Aの 遺伝子変異は常染色体優性遺伝疾患である若年発症成人型糖尿病1 (MODY1)の原因になるが、R76W変異では転写活性が低下するHNF4Aの他の変異と異なり小児期よりFanconi症候群を呈する。このことは単純なHNF4αの機能喪失ではなく、R76W変異特異的なターゲット分子の発現変化が背景に存在することを示唆する。 本研究ではR76W変異により制御される特異的な下流シグナルを明らかにし、尿細管機能、特にエンドサイトーシスへどのような作用を及ぼすかを細胞モデルおよびマウスモデルを用いて解析する。 培養細胞モデルを用いてHNF4A R76W変異により特異的に変化する分子を同定した。新規候補のエンドサイトーシスへの関与について、申請者らがすでに確立した細胞モデルを用いて検討している。 また、新規候補分子がエンドサイトーシスに関与する膜受容体と直接あるいは間接的 な相互作用の可能性について検討する。具体的には新規分子と既知の尿細管エンドサイトーシス関連分子の結合を免疫沈降により検討する。またこの分子と結合する分子を質量分析で網羅的に検討し、いくつかの結合蛋白候補を同定した。 さらに候補遺伝子Xのノックアウトマウスを作成し、表現型解析を行った。興味深いことにXのノックアウトマウスで特定の尿細管機能障害が生じることを見出し、そのメカニズムを検討中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ルシフェラーゼアッセイによりHNF4AのR76W変異で特異的に発現が抑制される下流遺伝子Xを同定した。Xは膜蛋白質であり、近位尿細管に特異的に発現していた。 Xを過剰発現させ共沈する分子を網羅的に質量分析で同定したところ、細胞内での分子のターンオーバーに関与する分子との結合が明らかになった。In vivo におけるXの機能を調べるためにXのノックアウトマウスを作成した。このホモノックアウトマウスはマウスの生存には違いが見られなかったが、特徴的なFanconi症候群(尿細管機能異常)を呈することが明らかになり、腎臓において重要な機能を有することがわかった。 このマウスの腎臓のRNAseqや免疫染色を行い、この表現型のメカニズムと関与しうる分子メカニズムを検討している。 本研究の成果はHNF4aによる尿細管の機能制御メカニズムの一端を明らかにするものであり、尿細管機能異常症の分子病態の解明につながる。
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Strategy for Future Research Activity |
Xのノックアウトマウスを用いて尿細管エンドサイトーシスを制御するメカニズムの詳細を解析する。またHNF4A R76W変異患者のサンプルを用いてヒトの疾患発症における役割も検討する。
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Causes of Carryover |
学会出席がオンライン中心となったこと、また一部の研究については順調に進行し、条件検討に要するコストが当初の想定よりも少なく済んだこと、などが次年度使用額が生じた理由である。 次年度には当初の計画に沿った実験と合わせ、多角的な検討項目を追加して行う計画である。
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