2021 Fiscal Year Research-status Report
全ゲノム解析による先天性GPI欠損症の新規責任遺伝子探索
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21K07869
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Research Institution | Yokohama City University |
Principal Investigator |
今村 江里子 (輿水江里子) 横浜市立大学, 医学研究科, 特任助教 (80637877)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 全ゲノムシーケンス / 全エクソーム解析 / 先天性GPI欠損症 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、(1) 全エクソーム解析では原因の特定に至らなかった先天性グリコシルホスファチジルイノシトール(GPI)欠損症が疑われる2症例に対し、両親を含むトリオ検体を用いた全ゲノムシーケンスを施行した(イルミナショートリードシーケンス)。さらに、(2) 先天性糖鎖異常症(先天性GPI欠損症を含む)が疑われる新規症例に対し、全エクソームシーケンスによる病的バリアントのスクリーニングを実施した。 (1) 一塩基変異、構造変異およびリピート変異に着目し、両親に由来しない患者特異的な新規突然変異(de novo)の検出を試みた。全ゲノムシーケンスデータからは大量のバリアント情報が出力されるため、In-houseコントロールデータ477人およびtommo7k、gnomAD v3の公共データベースからマイナーアレル頻度情報によりフィルタリングを行った。その結果、疾患との関連が疑われる遺伝子のコーディング領域に候補となるバリアントは検出されなかった。全エクソーム解析のターゲット外であるディープイントロン領域において、スプライシングに影響を与える可能性のあるde novoバリアントを検出するために、SpliceAIを用いた予測を行った。病原性の可能性が考えられる、SpliceAIスコア0.2以上で、スプライシングに異常を来たす可能性が高いバリアントは見出されなかった。 (2) 15例の新規症例に対し全エクソーム解析を施行した。9例(60%)において病的バリアントの同定に成功し、解決しなかった6例は今後両親を含めたトリオ解析を予定している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
ショートリードシーケンサーによる全ゲノム解析データから出力されるバリアントが大量であるため、病的効果が予想されるバリアントを絞り込む解析フローの構築に時間を要した。ロングリードシーケンサーを用いた解析にはクオリティの高いゲノムDNAを多く必要とするが、基準に達するゲノムDNAが少ないため解析が遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は、両親に由来しない患者特異的なde novoバリアントを中心に病的バリアントの検索を行った。一塩基置換および微小な塩基の欠失・挿入からは候補となるバリアントが見出されなかったため、今後はより大きな欠失、挿入、重複や構造変化を伴うバリアントの検出を試みる。ショートリードによる全ゲノムシーケンス解析から候補バリアントが見出されなかった症例はロングリードシーケンスによる全ゲノム解析を予定している。 先天性GPI欠損症の主な病因となるPIG遺伝子群は、潜性遺伝(劣性変異)であることが知られている。全エクソーム解析からは、片アレルのみ病的変異が検出されているが、もう片アレルの変異が見付かっていないため診断が確定されない症例が存在する。変異が検出されない理由としては、エクソームでは解析ターゲットに設定されていない領域(ディープイントロン等)に病的変異が隠れている可能性が考えられる。これらの症例に対しては、特定のゲノム領域に標的を絞り、病的バリアントを効率的に検索することが可能な、オックスフォード・ナノポア社のAdaptive Sampling(標的分子をリアルタイムで電子的に選択するロングリードシーケンス法)を施行する。
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Causes of Carryover |
ロングリードシーケンスに適した高品質なDNAの確保が難しいため、ロングリード解析を次年度に持ち越すことになった。新型コロナ禍において海外の学会に参加する機会が減ったため差額が生じた。次年度は今年度全ゲノム解析を実施できなかった検体および新規候補検体に対し、ロングリードシーケンスを施行する。片アレルのみ病的バリアントが検出されている検体に対しては、イントロン領域および非翻訳領域をターゲットとしたAdaptive Samplingを試みる。感染状況を踏まえながら、国内外の学会へ参加する予定である。
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