2023 Fiscal Year Research-status Report
全ゲノム解析による先天性GPI欠損症の新規責任遺伝子探索
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21K07869
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Research Institution | Yokohama City University |
Principal Investigator |
今村 江里子 (輿水江里子) 横浜市立大学, 医学部, 助教 (80637877)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 全ゲノムシーケンス解析 / 先天性GPI欠損症 / ロングリードシーケンシング |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、全エクソーム解析では原因の特定に至らなかった「先天性グリコシルホスファチジルイノシトール(GPI)欠損症」が疑われる10家系11症例に対し、ナノポアロングリードシーケンス(Oxford Nanopore Technologies)による全ゲノムデータ解析を行った。データ量として、1検体あたり24 Gbから89 Gbの出力を得ることに成功し、シーケンスリード長は短い検体では平均6.2 kbpであったが、最も長い検体では平均27 kbpであった。配列アライメントのデータ解析ツールであるLASTを用いてリファレンス配列(GRCh38 /hg38)にアライメントを行い、dnarrangeソフトウェアにより構造変化を検出した。その結果、病原性のない構造変化も大量に検出されたが、29検体の健常コントロールデータと比較して、共通変化を差し引くことで患者特異的に認められる領域を100から200箇所程度に絞り込むことに成功した。ロングリードシークエンシングは、ショートリードシークエンシングでは検出が困難な長鎖タンデムリピート配列の解析を有利とする。そこで、タンデムリピート配列を網羅的に解析することが可能なtandem-genotypesソフトウェアにより、タンデムリピートの伸長および短縮を検出した。これらのシーケンスデータ解析から検出された患者特異的な変化と疾患との関連性を検証した。 ナノポアロングリードシーケンサーから得られるデータは、ショートリードシーケンサーと比較してシーケンス精度が低いことが知られている。現在の技術では一塩基バリアントの検出はショートリードシーケンサーの方が高感度のため、2家系のショートリード全ゲノム解析を追加した。両親に認めないde novoバリアントおよびコンパウンドヘテロ接合性に存在するバリアントを抽出し、疾患の原因候補となり得るバリアントを検索した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ナノポアロングリードシーケンサーによる全ゲノム解析のセットアップが整い、患者11症例の解析データを取得した。また、エクソーム解析から片アレルにしか病因を疑うバリアントが検出されていない患者3症例を対象にナノポアターゲットロングリードシーケンスを実施し、ターゲット遺伝子を含む領域を選択的に抽出した。ショートリードシーケンサーによる全ゲノム解析データは、両親を含む4家系(4トリオ)と患者1症例となり、そのうち1症例からは、SAT2B遺伝子のエクソン6からエクソン8を含む約28k bpの逆位を検出することに成功し、疾患の原因を特定した。
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Strategy for Future Research Activity |
現段階では、ロングリードシークエンシング解析から有力な候補となるバリアントの検出に至っていない。ロングリードシークエンシング解析はベースコールの出力方法や、二次解析の手法が日々アップデートされている。候補バリアントが見出されなかった場合は、11症例のロングリードシーケンスデータおよび3症例のターゲットロングリードシーケンスデータを最新の解析手法で追加解析する。いずれの症例も全エクソーム解析を施行済のため、ノンコーディング領域に未知のバリアントが存在する可能性が高いと考えらる。ノンコーディング領域に対する注釈(アノテーション)をSplicing AIやUTRannotatorにより付加し、gnomADなどの健常コントロール集団データベースのバリアント頻度情報と比較し、病的変化が生じる可能性を総合的に判断する。
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Causes of Carryover |
ロングリードシーケンスが可能なクオリティおよびゲノムDNA量が担保された検体が想定よりも少なく、解析検体数が制限されたため差額が生じた。次年度は新規候補検体に対し、ロングリードシーケンサーおよびショートリードシーケンサーによる全ゲノムシーケンスを施行する。データ解析に必要なサーバー環境、ストレージを強化する。
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