2023 Fiscal Year Annual Research Report
疾患iPS細胞によるピルビン酸脱水素酵素欠損症の研究基盤の開発
Project/Area Number |
21K07870
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Research Institution | Jichi Medical University |
Principal Investigator |
阿部 朋行 自治医科大学, 医学部, 講師 (20610364)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
遠藤 仁司 自治医科大学, 医学部, 教授 (50221817)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 疾患iPS細胞 / ピルビン酸脱水素酵素欠損症 / 脳オルガノイド / 神経分化 |
Outline of Annual Research Achievements |
ピルビン酸脱水素酵素複合体(PDHC)欠損症は、エネルギー産生障害を軸とした先天性代謝異常をきたす希少指定難病であり、Leigh脳症の原因の1つである。本研究では、およそ30年前に集めたPDHC欠損症患者由来の凍結保存細胞からiPS細胞を樹立し、本症に対する治療薬探索・評価システムを開発することを目指す。 4例(男児2名、女児2名)のPDHC欠損症患者由来細胞から、NANOGなどの未分化マーカーを発現し、多分化能を有するiPS細胞が作製できた。変異部位は4例いずれも既知の同定済みのもので、変異型PDHA1を発現するかどうか解析した結果、男児由来iPS細胞では変異型PDHA1のみを発現したが、女児患者由来iPS細胞では変異型PDHA1の発現が検出できず、片方のX染色体で不活化マーカーH3K27me3が陽性だった。そこで、女児患者iPS細胞にX染色体再活性化培養を行い、未分化状態のままX染色体を再活性化させると、2例いずれもH3K27me3が陰性となり、変異型PDHA1を約5%発現した。一部で変異型を発現する女児患者由来iPS細胞から変異型のみを発現するクローンを分離培養することを試みたが、細胞が死んでしまい分離できなかった。この結果から、神経細胞や大脳オルガノイドの分化誘導には、男児患者由来iPS細胞を用いることにした。男児患者iPS細胞から得られた神経細胞、大脳オルガノイドは、健常人のものと比べて神経細胞の分化・増殖が不十分で、未熟な構造だった。この症例ではビタミンB1に感受性を示しており、その臨床症状と同様に、ビタミンB1添加培養によって神経細胞の分化・増殖を改善できた。現在、男児患者由来iPS細胞から得られたデータと疾患の関連性についてより詳しく解析している。
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