2021 Fiscal Year Research-status Report
ST2陽性肝細胞癌による免疫疲弊システムの解明及び治療法の確立
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21K07890
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
岡田 光 金沢大学, 医薬保健学総合研究科, 特任助教 (50788916)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山下 太郎 金沢大学, 附属病院, 准教授 (90377432)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 肝細胞癌 / 免疫療法 |
Outline of Annual Research Achievements |
免疫チェックポイント阻害剤(ICI)における肝細胞癌(HCC)側の宿主免疫応答機序は明らかではない。今後、リンパ球の腫瘍浸潤の度合いで分類された免疫学的分類とHCCにおける宿主免疫反応の関係性を明らかにすることで、ICIの有効性を示すバイオマーカーを探索することは重要な課題になる。これまで肝細胞癌の免疫システムを研究する確立されたツールが存在しないため、申請者は新たに腫瘍形成能をもつ5種類のマウス初代肝がん細胞株を樹立した。申請者は、樹立したマウス初代肝がん細胞株からICI療法の非応答性因子Interleukin 1 receptor like 1(IL1rl1、又はST2)を同定した。ST2陽性HCCは、ICIに対する治療抵抗性をもち、腫瘍内微小環境の免疫システムを劇的に低下することで腫瘍成長を促し、全生存率(OS)を有意に低下させた。申請者は、興味深いImmune exhausted HCCの特徴を掴み、新規因子IL1rl1(ST2)の宿主側の免疫応答機序の解析、ICI阻害剤の治療の際のバイオマーカー、ICI阻害剤とST2阻害剤の併用療法への治療応用への展開できるかの研究基盤をつくる。更に、作製した5種類を用いてICI阻害剤だけでなく、様々な抗がん作用のある薬剤をつかった癌免疫治療の研究も行う。本研究は、申請者が新たに樹立した肝細胞癌株を用いてST2陽性肝細胞癌の免疫非応答・疲弊機序を解明し、微小環境の免疫活性システムを正常化させる治療法の確立を目的とする。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
ST2陽性のヒトHCC症例でも同様にリンパ球浸潤が高頻度に見られ、全生存率(OS)も有意に低かった。Crispr cas9によるST2LとsST2を両方欠損したImmune exhausted HCC細胞は、Wild typeと比較して2D細胞培養による細胞増殖速度には変化がみられないが野生型C57BL6Jマウスの皮下移植による腫瘍形成を有意に阻害した。この結果は、ST2が免疫細胞を介した現象であることを意味している。そのため、マウス皮下腫瘍を用いてSingle cell RNA-Seq解析を行った。この実験から、ST2による肝細胞癌における免疫疲弊作用の原因因子及び標的細胞を見つけることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
ST2は、IL33の作用を抑制することがこれまでに報告されている。しかしながら、予備的検討から、免疫疲弊を誘導する標的細胞に直接ST2が関与する可能性がある結果を得ている。そのため、テトラシステインTagを用いてST2分子そのものを超解像度顕微鏡とタイムラプス共焦点顕微鏡を用いて追跡する。ST2が取り込まれた標的細胞を時間依存的に遺伝子発現解析することで、ST2の下流シグナルを探索する。 ST2LとsST2は、プロモーターによる発現調節は全く異なる。2種類のプロモーター活性を測定するプラスミドベクターは作成済みであるため、腫瘍細胞でST2が発現するようになる調節因子を探索する。
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