2022 Fiscal Year Research-status Report
炎症性腸疾患における免疫細胞の分化可塑性の機序と病態の解明
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21K07895
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
村上 真理 大阪大学, 大学院医学系研究科, 助教 (10801293)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 炎症性腸疾患 / 獲得免疫細胞 / シングルセル解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
T細胞の過剰な免疫応答は炎症性腸疾患の主たる誘因であるが、炎症性腸疾患特異的T細胞サブセットは今まで報告されていなかった。これまでの研究において我々はヒト腸管粘膜固有層T細胞を単一細胞レベルで包括的に解析することにより、炎症性の性質を有するクローン病特異的T細胞サブセットを同定した。本研究ではこれらの研究から得られた知見と手法をさらに発展させ、クローン病特異的T細胞サブセットの誘導を制御する上流の因子について明らかにすることを目的とする。クローン病患者の切除腸管病変部および大腸癌患者の非癌部(コントロール)の腸管粘膜固有層よりリンパ球を単離し、シングルセルRNA-seqおよびシングルセルATAC-seqを行った。まず、シングルセルRNA-seq解析より各サブセットにおける発現変動遺伝子を抽出し、得られた各細胞サブセットの遺伝子発現プロファイルの結果からこれまでの研究で見出したクローン病特異的T細胞サブセットに該当するサブセットを同定した。さらに同検体を用いて行ったシングルセルATAC-seqの結果から、クローン病特異的サブセットにおいて他のサブセットに比して有意に多く発現するオープンクロマチンモチーフを検出し、そこに結合する転写因子をランク付けするとともに、複数のバイオインフォマティクス解析を組み合わせることにより、クローン病特異的T細胞サブセットを制御すると考えられる候補転写因子を複数個絞り込んだ。これらの候補転写因子をin vitroの実験系でさらに絞り込む予定である。さらにシングルセルRNA-seqの結果より、この疾患特異的サブセットには腸内細菌由来の代謝物の受容体がきわめて特異的に発現することを見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
充分な解析のための検体数の確保に時間を要するためやや遅れ気味であるが概ね計画通りに進行している。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の研究成果により、クローン病特異的T細胞サブセットを制御する因子を概ね絞り込むことができたため、ヒト由来の初代培養T細胞へのこれらの転写因子の過剰発現およびノックダウン実験によりクローン病特異的T細胞サブセットが誘導あるいは阻害されるか現在検証中である。さらに、クローン病特異的T細胞サブセット上に特異的に発現する受容体のリガンドである腸内細菌由来代謝物質がこの細胞に独特の性質を与える因子となるかどうかについても検証する。また、生検検体を用いて、クローン病特異的T細胞サブセットの割合と病態、そして糞便中の代謝物質との相関関係を明らかにすることにより、診断のバイオマーカーとしての有用性を検証する。
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Causes of Carryover |
解析に必要な臨床検体の入手状況が予定よりも遅れたため
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