2022 Fiscal Year Research-status Report
糖脂質代謝異常にフォーカスした多層オミックス解析による糖尿病関連肝発癌機構の解明
Project/Area Number |
21K07896
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
相方 浩 広島大学, 医系科学研究科(医), 専門研究員 (30403512)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 肝癌 / 非ウイルス性 / 糖尿病 / 生活習慣病 |
Outline of Annual Research Achievements |
HBV、HCV感染のない非肝炎ウイルス性肝癌患者が増加しているが、これらの患者の多くは、糖・脂質代謝異常をはじめとする生活習慣病を合併していることが判明している。一方、これらの患者における肝発癌機構は不明な点が多く、肝発癌高リスク症例を効率的に囲い込むスクリーニング法は確立されていない。また、これまでのヒトゲノム、がんゲノム、エピゲノム、トランスクリプトの網羅的研究では、十分に明らかにすることができなかった非ウイルス性肝発癌機構について、本研究では、糖・脂質代謝異常に関連の深いメタボローム、リピドーム、そしてメタゲノム情報を追加して、これまでに蓄積された複数のオミックス情報を統合することで、その一端を明らかにすることを目指し、非肝炎ウイルス性肝発癌高リスク群の囲い込みに有用なバイオマーカー同定など、臨床応用に資する成果の創出を目指している。 初年度に引き続き、解析対象症例、臨床情報の集積および検体の選定を行った。2型糖尿病を有する症例について、糖尿病罹病期間、治療内容、肝線維化や脂肪肝の程度などの臨床情報を集積し、肝発癌の有無により、層別化した。また、これらの対象症例の糞便検体を収集して、DNAを抽出した。抽出したDNAを用いて、順次、腸内細菌叢解析を進めている。具体的には、PCR反応で16S rRNAの標的配列を増幅し、次世代シークエンサーで塩基配列を決定した。可変領域の相同性を細菌データベースの参照配列に照らし、分類・同定を行い、組成比を評価している。さらに、血液検体を質量分析装置にかけて、メタボロミクス解析およびリピドミクス解析を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
糖尿病患者を対象として、糖尿病罹病期間、治療内容、肝線維化や脂肪肝の程度などの臨床情報を集積し、肝発癌の有無で群別される対象症例について、選定を行い、臨床情報についてデータクリーニングを行った。また、対象症例において、糞便検体を収集しており、収集した糞便検体については、順次、DNA抽出~16S rRNA解析へと進めている。さらに、血液検体については質量分析装置を用いて、糖代謝・脂質代謝に着目した代謝物の解析を進めている。それぞれのデータを単層で群間比較を行っている。現在のところ、ほぼ予定通りの進捗状況である。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、16S rRNA解析とメタボロミクス解析・リピドミクス解析を行う。まずは群間比較を基本として、それぞれ単層での解析を進めている。今後は、主成分分析や階層・非階層クラスター分析など多変量解析の手法を用いて探索的な検討も行う。最終的には、過去の研究あるいは本研究により得られた単層データについて、各層の相関関係を基本として、ネットワーク解析による情報の統合・集約を試みるトランスオミックス解析を行う予定である。糖尿病患者における、発癌あるいは担癌状態に寄与する糖代謝・脂質代謝の異常について、トランスオミックスネットワークモデルを構築した上で、独立した症例群での検証を行う。肝癌高リスク群の囲い込みに有用なバイオマーカーの同定を目指す。
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Causes of Carryover |
実験計画の見直しにより、効率化が図られ、次年度使用額が生じた。本使用額分を用いて、さらに実験精度の向上に努める予定である。
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Research Products
(1 results)