2021 Fiscal Year Research-status Report
胃癌と十二指腸潰瘍-ピロリ菌感染の場を起点として解く異なる二つの胃疾患発症機序
Project/Area Number |
21K07898
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Research Institution | Oita University |
Principal Investigator |
赤田 純子 大分大学, 医学部, 助教 (30346548)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山岡 吉生 大分大学, 医学部, 教授 (00544248)
松本 昂 大分大学, 医学部, 助教 (50609667)
塚本 善之 大分大学, 医学部, 助教 (00433053)
村上 和成 大分大学, 医学部, 教授 (00239485)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | ヘリコバクター・ピロリ / 胃癌 / 十二指腸潰瘍 / GWAS解析 / 胃オルガノイド |
Outline of Annual Research Achievements |
東アジアの胃がん死亡率は世界平均の2倍近くと、胃癌死の低減へは道半ばである。胃がんの主要な誘導因子はHelicobacter pylori(ピロリ菌)である。 我々は東アジアのピロリ菌株を用い、対照的な胃疾患である胃癌と十二指腸潰瘍にそれぞれ由来する菌株を、ゲノムワイド遺伝子関連(GWAS)解析にて比較し、胃癌株に優位に関連する1遺伝子変異(SNP)を持つ11遺伝子を抽出した。本研究では、ピロリ菌感染の場であるヒト胃粘膜組織、および胃オルガノイド感染実験系を用いて、胃がんおよび十二指腸潰瘍に関連するピロリ菌病原体因子と、関連する宿主因子を明らかにする。 今年度は、GWAS解析で抽出された11遺伝子の内、細菌の遊走能に関連することが知られているdsbG遺伝子にて、解析システムを構築した。標準株26695のdsbG遺伝子破壊株を作成し、さらにその株を基に遺伝子相補株を作成した。先のゲノム解析にて遺伝的に最も近かった胃癌株および十二指腸株セットを、ベトナム株1セットおよび日本株2セットを選び、それぞれの株由来のdsbG遺伝子を増幅し、ゲノム上の同じ位置に、各dsbG遺伝子を導入した相補株を作成した。遊走能を確認すると、胃癌株由来dsbG遺伝子相補株は、十二指腸由来dsbG遺伝子相補株よりも、酸性条件下で遊走能が高い傾向があった。親株セットではそれぞれ、 顕著な遊走能の違いが認められた。 今後の解析に用いる日本人由来胃オルガノイドの作製を進めており、さらに3次元オルガノイドから2次元オルガノイドの構築条件を検討している。並行して、ピロリ菌感染を試みつつ、胃オルガノイド感染システムを構築中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は、dsbG遺伝子を最初のモデル遺伝子として、遺伝子改変株作成方法確立を試みている。標準株dsbG遺伝子に胃癌型および十二指腸潰瘍型SNPのみを導入した遺伝子相補株も作成した。細かな表現型の違いをどこまで数値化できるかが重要で、同じ遺伝子改変株であってもコロニーごとに表現型のバリエーションが認められるため、それをどのように解析しまとめるか工夫が必要で、実験条件下ではあるが変異株集団と捉えて解析を試みている。 また、ピロリ菌遺伝子の表現型をこれまでの細胞解析系よりも深く解析するために、胃オルガノイドを活用したい。3次元的に増殖する胃オルガノイドから、感染実験のやりやすい2次元胃オルガノイドの安定的構築を試みている。菌および宿主細胞の両面から、ピロリ菌感染実験の技術的幅を広げるべく改良中である。
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Strategy for Future Research Activity |
dsbG遺伝子は、標準株26695株を基に、dsbG破壊株、胃癌株由来dsbG相補株、十二指腸潰瘍株由来dsbG相補株、胃癌特異的SNP導入dsbG相補株、十二指腸潰瘍特異的SNP導入dsbG相補株の作成が済んだので、比較解析を進める。しかしながら、西洋株である26695株を背景とした時に、東アジア株を用いて解析してきた表現型の差がうまく認められないことも想定される。その場合は、東アジア株を親株として上記遺伝子改変株を作成し直す予定である。 遊走能の他、各株の病原性の違いを、培養細胞および胃オルガノイド系を使って解析してゆく予定である。
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Causes of Carryover |
研究室の共同研究者が学内および学外で別予算の研究費を獲得し、その予算から本研究にも関わる一部の物品費が支出されたために余剰分が発生した。そこで、次年度に繰り越し、活用することとした。
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Research Products
(5 results)
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[Journal Article] Genome-wide association study of gastric cancer- and duodenal ulcer-derived Helicobacter pylori strains reveals discriminatory genetic variations and novel oncoprotein candidates2021
Author(s)
Tuan VP, Yahara K, Dung HDQ, Binh TT, Huu Tung P, Tri TD, Thuan NPM, Khien VV, Trang TTH, Phuc BH, Tshibangu-Kabamba E, Matsumoto T, Akada J, Suzuki R, Okimoto T, Kodama M, Murakami K, Yano H, Fukuyo M, Takahashi N, Kato M, Nishiumi S, Azuma T, Ogura Y, Hayashi T, Toyoda A, Kobayashi I, Yamaoka Y.
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Journal Title
Microbial Genomics
Volume: 7
Pages: 000680-000680
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Int'l Joint Research
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[Journal Article] Serum Helicobacter pylori antibody reactivity in seven Asian countries using an automated latex aggregation turbidity assay2021
Author(s)
Akada J, Tshibangu-Kabamba E, Tuan VP, Kurogi S, Matsuo Y, Ansari S, Doohan D, Phuc BH, Subsomwong P, Waskito LA, Binh TT, Nguyen LT, Khien VV, Dung HDQ, Miftahussurur M, Syam AF, Tshering L, Vilaichone RK, Mahachai V, Ratanachu-Ek T, Shrestha PK, Yee TT, Htet K, Aftab H, Matsuhisa T, Uchida T, Okimoto T, et. al.
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Journal Title
Journal of Gastroenterology and Hepatology
Volume: 36
Pages: 2198-2209
DOI
Peer Reviewed / Int'l Joint Research
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[Journal Article] Helicobacter pylori type 4 secretion systems as gastroduodenal disease markers2021
Author(s)
Phuc BH, Tuan VP, Dung HDQ, Binh TT, Tung PH, Tri TD, Thuan NPM, Van Khien V, Trang TTH, Akada J, Matsumoto T, Yamaoka Y.
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Journal Title
Scientific Reports
Volume: 11
Pages: 4584-4584
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Int'l Joint Research
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