2021 Fiscal Year Research-status Report
腸内細菌叢による免疫・神経シグナルを介した膵臓癌進展機序の解明
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21K07907
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
高橋 良太 東京大学, 保健・健康推進本部, 助教 (80647660)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
伊地知 秀明 東京大学, 医学部附属病院, 講師 (70463841)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 膵臓癌 / 腸内細菌叢 / 慢性膵炎 |
Outline of Annual Research Achievements |
LSL- KrasG12D;Pdx1-Cre;Elastase-IL-1betaマウス(KC-IL1betaマウス)の膵臓においては慢性膵炎に伴う膵腫瘍の進展促進と腫瘍内神経の増加が認められた。この腫瘍内神経について免疫組織学的に検討したところ、tyrosine hydroxylase陽性の交感神経浸潤が認められ、慢性膵炎による膵腫瘍進展におけるアドレナリンシグナルの役割が示唆された。またKC-IL1betaマウスではKCマウスと比較して腫瘍微小環境における免疫細胞浸潤が亢進しており、抗腫瘍免疫の低下が認められた。このことから慢性膵炎により誘導されたアドレナリンシグナルの亢進が抗腫瘍免疫の低下を介して膵腫瘍進展を促進する機序が示唆された。 腸内細菌叢の変化が膵炎や膵臓癌に与える影響について検討するため、KC-IL1betaマウスの便をKCマウスに移植したところ、膵炎の悪化と膵腫瘍の進展促進が認められた。またKC-IL1betaマウスに対して抗生物質を投与し腸内滅菌を行なったところ、膵炎及び膵腫瘍の進展が抑制された。これらの結果から、膵炎を介した膵臓癌の進展機序において腸内細菌叢が重要な役割を果たすことが示唆された。 16S rRNAシークエンスの結果では、Elastase-IL1betaマウスとKC-IL1betaマウスに共通して増加する細菌群がある一方、どちらかの群にのみ増加が認められる細菌群も認められた。このことから、KC-IL1betaマウスの腸内細菌叢における変化は慢性膵炎による作用と変異型Kras等による作用が複合的に働いていることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り、KC-IL1betaマウスにおける腫瘍内神経についての評価を行い交感神経浸潤が増加していることを見出した。また抗腫瘍免疫の低下におけるアドレナリンシグナルの役割を示唆する結果が得られた。腸内細菌叢から膵炎や膵臓癌の進展へ至る機序の解明については、基礎的な検討として便移植や抗生物質の投与による効果を検討し、仮説を支持する結果が得られた。また腸内細菌叢の解析から各マウスモデルの特徴的な変化を見出すことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
膵炎によるアドレナリンシグナルを介した膵腫瘍進展機序をさらに解析するため、KC-IL1betaマウスに対してベータ阻害剤を投与して腫瘍の進展、腫瘍微小環境における免疫細胞などの変化を解析する。またKC-IL1betaマウス及びKCマウスにおける腸内細菌叢による代謝産物に着目し、胆汁酸などの変化を解析する。慢性膵炎において膵外分泌機能の低下が腸内細菌叢を変化させるかを明らかにするため、膵酵素補充療法の効果を検討する。交感神経シグナルの阻害による腸内細菌叢の変化についても検討する。これらの解析により、慢性膵炎を背景とした膵発癌過程における腸内細菌叢の役割と治療標的としての可能性について明らかにすることを目指す。
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Causes of Carryover |
実験動物の飼育数が当初計画よりも少なかったため、残額が発生した。次年度は飼育数を増加する予定であり、通算すると計画通りに推移する予定である。
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