2022 Fiscal Year Research-status Report
非ウイルス性肝疾患でのオートファジーならびに封入体形成の意義
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21K07926
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Research Institution | University of Occupational and Environmental Health, Japan |
Principal Investigator |
原田 大 産業医科大学, 医学部, 教授 (00241175)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | Mallory-Denk体 / オートファジー / プロテアソーム / p62 / 酸化ストレス / 小胞体ストレス |
Outline of Annual Research Achievements |
慢性の肝障害が持続するとその頻度には差があるものの原因に関わらず、肝硬変、肝不全ならびに肝癌に進行するおそれがある。慢性ウイルス性肝炎 (B型肝炎とC型肝炎)の治療の進歩により肝疾患診療においてアルコール性肝障害、非アルコール性脂肪性肝疾患 (NAFLD)、ウイルソン病やヘモクロマトーシスのような代謝性肝疾患が注目されている。これらの疾患の重症例の病理所見に共通するものが肝細胞内封入体であるMallory-Denk体 (MDB)形成である。これはユビキチン、p62やケラチン8と異常蛋白 (unfolded proteins)などからなる構造物であり、酸化ストレス、小胞体ストレス、遺伝子変異、ウイルス感染、プロテアソームの異常やオートファジーの異常がこの封入体の形成に関与していると考えられているが、その詳細な機序ならびに意義は未だ完全には明らかでない。いくつかの神経変性疾患や一部の筋疾患においても類似の細胞内封入体が形成される。Idiopathic copper toxicosis(特発性銅中毒症)は原因不明の銅代謝異常であるが、小児からこの構造物が生じる。我々はこの構造物が異常蛋白の蓄積、脂質負荷、C型肝炎ウイルス感染症や銅の負荷といった様々なストレスに対する細胞の反応であることを示してきた。しかし、未だこの構造物の正確な意義は明らかではない。本研究ではこの細胞内封入体の形成過程とこの構造物の意義を明らかとし、様々な肝疾患での各種の肝細胞のストレスへの対応とそれを利用した治療の可能性を考えたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
近年アルコール関連肝疾患や非アルコール性脂肪性肝疾患においてp62を介したNrf2の活性化やmTORの活性化が肝発癌に重要であることが明らかとなってきた。p62はオートファジーにより分解される基質であり、オートファジーの抑制にて細胞内に蓄積する。このようなp62の過剰な状態ではMallory-Denk体(MDB)が形成されることを我々は明らかにしてきた。今回、プロテアソーム阻害、脂肪負荷ならびに3,5-diethoxycarbonyl-1,4-dihydrocollidine (DDC)を培養細胞とマウスに投与して酸化ストレス、小胞体ストレス、p62の発現ならびに局在、オートファジーの状態、MDB形成、Nrf2の核内移行ならびにNrf2の活性化によるHO1の発現とmTORのシグナルに関して検討を行なった。3種のストレスにより酸化ストレスと小胞体ストレスが引き起こされ、オートファジーの後期段階が障害された。またこれらの状態ではMDBが形成された。これらの状態ではNrf2の核内移行も認めたが、これはMDB形成細胞では抑制されていた。また、これらの状態ではmTORシグナルの亢進を認めた。微小菅重合阻害剤のあるノコダゾールやHDAC阻害剤であるトリコスタチンはMDBの形成を抑制し、Nrf2の核内移行を促進した。また、これらのMDB形成抑制はプロテアソーム阻害剤によるアポトーシスを促進した。またMDBの形成を抑制するとmTORのシグナルであるp-mTORやp-S6Kの発現が亢進していた。MDB形成によるp62や異常蛋白の隔離はNrf2の過剰活性化、mTORシグナルや異常蛋白による細胞死を抑制することが明らかとなった。オートファジーの活性化によるp62や異常蛋白の分解やMDB形成の調節はさまざまな肝疾患における細胞死や発癌を抑制出来る可能性があると考えられた。
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Strategy for Future Research Activity |
細胞の増殖調節にHippo-YAP (Yes-associated protein)シグナル伝達経路が重要であることが分かってきた。典型的には細胞の接触による細胞増殖の抑制はこの伝達経路の依存している。そのほかに細胞外基質の状態や細胞極性にも影響される。Hippoシグナル経路はYAPをリン酸化し、リン酸化されたYAPは細胞質に局在して14-3-3蛋白に結合するか、プロテアソームで分解される。Hippo経路がoffになるとYAPは活性化され、核へ移行してTEADを介して細胞増殖、抗アポトーシスや epithelial-mesenchymal transitionに関与するような蛋白の翻訳を亢進させる。小胞体ストレスの程度によってPERK、eIF1a。ATF4を介してYAPを活性化して細胞を生存させ、また、異なる程度によってはHippo、GADD34を介して細胞死を引き起こす。そのため様々な小胞体ストレス誘導剤にてストレスの程度を変えて細胞への影響を検討する。またYAP阻害剤であるverteporfinやオートファジーの促進や抑制の調節の影響を調べる。 Mallory-Denk体が様々なストレスに対する細胞の反応であることを示してきたが、それ以外の反応として近年ストレス顆粒という構造物が注目されている。より軽いストレスで一過性に出現する蛋白の翻訳を抑制する構造物と考えられるが、様々なストレスならびにオートファジーの調節がストレス顆粒形成に如何に影響するかをG3BP陽性顆粒の形成で確認してこの顆粒形成の細胞増殖ならびに細胞死での意義を調べる。
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Causes of Carryover |
まだ仕事が進行中で終了していません。昨年度は試薬を極めて節約して仕事を進めました。
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[Journal Article] Trends in hepatocellular carcinoma incident cases in Japan between 1996 and 2019.2022
Author(s)
Nakano M, Yatsuhashi H, Bekki S, Takami Y, Tanaka Y, Yoshimaru Y, Honda K, Komorizono Y, Harada M, Shibata M, Sakisaka S, Shakado S, Nagata K, Yoshizumi T, Itoh S, Sohda T, Oeda S, Nakao K, Sasaki R, Yamashita T, Ido A, Mawatari S, Nakamuta M, Aratake Y, Matsumoto S, Maeshiro T, Goto T, Torimura T.
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Journal Title
Sci Rep
Volume: 12
Pages: 1517
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] Autoimmune pancreatitis with gastriccancer: some IgG4-related diseases may be paraneoplastic syndrome.2022
Author(s)
Miyagawa K, Kumamoto K, Shinohara N, Watanabe T, Kumei S, Yoneda A, Nebuya S, Koya Y, Oe S, Kume K, Yoshikawa I, Harada M.
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Journal Title
Intern Med.
Volume: 61
Pages: 2155-2160
DOI
Peer Reviewed
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[Presentation] Safety and efficacy of atezolizumab (Atezo) + bevacizumab (Bev) in Japanese patients (pts) with unresectable hepatocellular carcinoma (uHCC): a prospective, multicenter, observational study (ELIXIR) - A preliminary analysis -2022
Author(s)
Ikeda M, Kato N, Kagawa T, Yamashita T, Moriguchi M, Nakamura S, Sawada K, Iijima H, Kamoshida T, Nakao K, Ohkawa K, Sugimoto R, Takehara T, Harada M, Yamamoto Y, Ito T, Kudo M, Kokudo N, Yamamoto K, Furuse J
Organizer
ESMO ASIA Congress
Int'l Joint Research
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