2022 Fiscal Year Research-status Report
癌由来代謝産物に注目した肝星細胞活性化の分子学的機序の解明
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21K07936
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
南 達也 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (60459401)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
工藤 洋太郎 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (90608358)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 肝星細胞活性化 / p62/Sequestosome1 |
Outline of Annual Research Achievements |
肝細胞がんは肝炎ウイルス感染やアルコール性、非アルコール性脂肪肝などの慢性肝障害を背景に発生・進展する主要な原発性肝がんである。肝星細胞はディッセ腔に存在し、慢性肝障害時に活性化してサイトカインや細胞外マトリックスを産生・分泌し、肝線維化を進行させる。活性化型星細胞は、がん微小環境においてがん細胞とシグナル交換し、がんの増悪因子として働くことが知られており、肝星細胞の活性化制御機構の理解は肝がんの予防や改善につながる可能性がある。 肝星細胞の活性化に、p62/Sequestosome1が抑制的に働くことが報告されている。p62は、活性化型星細胞で発現が低下し、その欠損が星細胞の活性化を惹起する。また、マウスでは肝星細胞のp62発現低下が肝線維化だけでなく、肝発がんも促進し、肝細胞がんの発生・進展に大きな影響を与えることが報告されている。 本研究では、がん細胞由来の代謝産物が肝星細胞のp62低下、すなわち肝星細胞の活性化責任分子であるとの仮説に基づいて、乳酸に注目した。解糖系産物である乳酸は、肝星細胞のp62を濃度、時間依存的に減少させ、mRNAの低下も引き起こした。これはp62 mRNAの安定性低下によるものであった。 これまでの研究では、がん細胞由来のケモカインやサイトカインが星細胞を含む間質細胞の活性制御に重要だとされていたが、本研究では代謝物を中心とした小分子に注目し、乳酸が肝星細胞の活性化に関与することを示した。今後の研究では、乳酸が具体的にどのような分子学的機序でp62の発現低下を引き起こすのか、また生体内においても同分子が肝星細胞のp62の発現低下を介して肝線維化に寄与しているのかについて明らかにすることが重要と考える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
乳酸による星細胞におけるp62低下がmRNAレベルで生じていることを確認した(real-time PCR法)。またアクチノマイシンDをもちいた転写阻害剤の使用によるmRNA安定性解析実験の結果、p62 mRNAの安定性が低下していることが原因であることがわかった。
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Strategy for Future Research Activity |
p62はタンパクレベルでも低下していたため、タンパクの安定性にも変化がないか検討を加えたい。具体的にはオートファジーないしプロテアソーム阻害剤を用いた実験により同機序を介したタンパク分解速度が変化していないか検討する。肝がん細胞の上清の代謝物を網羅的に解析して乳酸の他に星細胞を活性化させる因子がないか探索もおこないたい。
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Causes of Carryover |
予定していた動物実験を次年度繰り越して実施予定である。具体的には四塩化炭素投与モデルおよび高脂肪食投与モデルによるマウス肝線維化モデルを作成し、乳酸投与の有無による線維化ならびに星細胞の活性化の比較実験を行う予定である。
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