2022 Fiscal Year Research-status Report
大腸癌初代培養CTOSを用いた、BMP-EGFRクロストークの機序と多様性の解明
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21K07942
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
近藤 純平 大阪大学, 大学院医学系研究科, 准教授 (80624593)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
井上 正宏 京都大学, 医学研究科, 特定教授 (10342990)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | BMP4 / LRIG1 / EGFR / 大腸がん / オルガノイド |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、大腸がんにおいてBMP/SMAD経路とEGFR/MEK経路にこれまで報告のないクロストークが存在する可能性を検証すべく、大腸がん患者由来オルガノイド培養系(CTOS法)を用いた検討を行っている。これまでに、約20症例から調製し培養したCTOSラインを用いて感受性アッセイを行ったところ、大腸がん症例の中に、BMP阻害によりEGFRタンパク量が著しく減少する症例群の存在をを確認した。免疫沈降法により検討したところ、EGFRはBMP阻害剤LDN193189処理により高度にユビキチン化されており、またタンパク分解酵素阻害剤の併用によりEGFRの減少が抑制されたことから、BMP阻害により分解が促進されることが明らかとなった。一方、BMP受容体とEGFRの直接的な会合の証拠は得られなかった。in vivoでの検討の結果、BMP阻害とMEK阻害剤の併用が効果的であるオルガノイド、および併用効果の見られないオルガノイドに層化することができた。併用効果がみられる群においては、BMP阻害によってERBBファミリーのnegative regulatorとして知られているLRIG1の発現が強く誘導される傾向を認めた。LRIG1のノックダウンにより、BMP阻害による増殖抑制が減弱したことから、LRIG1誘導がこの現象の機序の一つであると示唆された。また、BMP阻害によるLRIG1の誘導は、BMP阻害による増殖抑制と相関しており、BMP/MEK阻害剤併用療法の効果予測のツールになる可能性が考えられた。 これらの成果につき、現在論文投稿中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
BMP阻害MEK阻害併用による大腸がん治療の可能性を示せただけでなく、その効果予測マーカーの開発に繋がる因子としてLRIG1の関与を発見した。治療法と効果予測マーカーの同時開発は、将来的に臨床試験をクリアできる可能性を高めるために重要な、しかし難しい課題である。今回、本研究のような治療法開発の早期の基礎研究の段階で効果予測法の手掛かりをつかめたことは、意義深い成果であると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
現在、BMP阻害剤による増殖抑制について、LRIG1以外の機序についても検討中である。いくつかのリガンドのオートクラインに多様性がある事が分かってきた。また、10ラインのオルガノイドに対してomicsの手法によりBMP阻害により変動する遺伝子解析を行ったデータをもとに、増殖抑制と相関する遺伝子群を抽出している。今後は、これらの因子が新たな機序となりうるかの検証を行っていく。
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Causes of Carryover |
年度内に論文が受理される予定で考えていたが、リバイスが年度をまたいでしまい、掲載料の支払いが次年度となった。次年度に掲載料として使用する。
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