2021 Fiscal Year Research-status Report
ゲノム不安定性による体細胞モザイクを介したクローン病の発症・病態変化の解析
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21K07955
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
角田 洋一 東北大学, 大学病院, 助教 (50509205)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
木内 喜孝 東北大学, 高度教養教育・学生支援機構, 教授 (20250780)
黒羽 正剛 東北大学, 医学系研究科, 非常勤講師 (70709469)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | クローン病 / 染色体異常モザイク / チオプリン製剤 |
Outline of Annual Research Achievements |
染色体異常モザイク(mCA)は、造血器悪性腫瘍のリスクを高めるとともに、様々な疾患のリスクとなりうることが知られている。本研究ではクローン病(CD)や潰瘍性大腸炎(UC)などの炎症性腸疾患(IBD)におけるmCAの存在について解析を行い、造血器悪性腫瘍の発症やIBD表現型の変化と関連があるかを検討する。今年度はIBD患者3,339名の末梢血中のDNAのアレイ解析データを使用してmCAを解析し、mCAの臨床的および遺伝的リスク因子の探索を行った。 mCAは、既報通り加齢とともに増加していた。IBD患者は若年がメインのため、50歳以下にに限定した解析を行った。その結果、潰瘍性大腸炎に比較してクローン病でのmCAの発生率が高いことが示された(オッズ比=2.15、P=1.17e-2)。これらのモザイク変異のほとんどはコピー数以上を伴わないヘテロ接合性の欠如(CN-LOH)であり、3番染色体と6番染色体に有意に多く認められた。また、それとは独立して20歳未満でのチオプリンへの曝露が、mCAの新規独立危険因子として同定された。(オッズ比=5.68、P=1.60e-3)。一方、罹病期間や、抗TNFα抗体製剤の使用、その他の臨床因子は有意な関連は認められなかった。Gene ontology enrichment解析により、CD患者のmCAに特異的に存在する遺伝子は、粘膜免疫反応に関連する因子と有意に関連していることが明らかになった。ゲノムワイド関連研究の結果、ERBIN、CD96、AC068672.2がCD患者のmCAと有意に関連していた(それぞれ、P = 1.56e-8, 1.65e-8, 4.92e-8 )。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
基盤となる大規模データを用いたゲノム解析について、予定通り解析が完了しており、おおむね順調に解析が進んでいると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
以上の結果はCD患者とUC患者のmCAの差は、CDにおける造血器悪性腫瘍の高い発生率を支持するものであるが、モザイクの発生が、疾患の結果であるか、原因であるかは不明である。今後、新たな検体での検証研究および詳細な臨床経過との関連などの解析を加えながら、チオプリンやCD、UCにおけるゲノム不安定性についての評価を進めていく。
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Causes of Carryover |
ゲノム解析の最小解析単位サンプル数の端数が発生し次年度予定分と合わせて解析することとなったため差額が発生した。当初の予定自体に変更はなく解析を行う予定である。
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