2023 Fiscal Year Research-status Report
C型肝炎ウイルスおよび新型コロナウイルス複製に必要な膜小胞の形成メカニズムの解析
Project/Area Number |
21K07974
|
Research Institution | National Institute of Infectious Diseases |
Principal Investigator |
相崎 英樹 国立感染症研究所, ウイルス第二部, 室長 (00333360)
|
Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
|
Keywords | C型肝炎ウイルス / 新型コロナウイル / doble membrane vesicle / NS5A / サブゲノミックレプリコン / HSD11 / HSD13 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、C型肝炎ウイルス(HCV)をモデルとして、doble membrane vesicles (DMV)形成のメカニズムを明らかにすることである。HCVのDMV形成については、NS5AがDMV形成に必須なことが知られている。そこで、サブゲノミックレプリコンを導入したHuh7細胞を用いて、NS5Aタンパクで免疫沈降反応を行い、プロテオーム解析を行ったところ、NS5A結合タンパクとして11β-Hydroxysteroid dehydrogenase (HSD11)を見出した。さらに、HCVは脂肪滴周辺膜で粒子形成していることが知られているため、脂肪滴周辺膜を粗精製し、比較プロテオーム解析を行ったところ、HSD11を見出した。興味深いことに、HSD11はウイルス粒子産生に関与していることが考えられた。HSD11と近い構造を持ち、機能も類似しているタンパクとしてHSD13が存在する。HSD11および13のHCV生活環、特に複製および粒子形成における役割を解析している。 SARS-CoV-2もHCVと同じRNAウイルスで、細胞内でDMVを形成し、そこで複製をしている。最近、トランスポゾンの逆転写酵素活性により、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)遺伝子の一部が逆転写され、宿主細胞遺伝子に組み込まれる可能性が報告された。本研究ではSARS-CoV-2に感染したVero細胞及び腸管オルガノイドからRNAおよびDNAを抽出し、細胞内におけるSARS-CoV-2の存在様式について解析を目指している。さらに、次世代シークエンサーを用いて遺伝子発現解析を行っている。また、COVID-19罹患後の大腸検体を用いた解析でも、RNAとDNAの両方が増幅されていることが明らかになり、SARS-CoV-2が逆転写される可能性が示唆されている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
HSD11とHCV粒子形成の関連性を調べるため、HSD11の脂肪滴局在シグナル欠損、酵素活性欠損など14種類の各種deletion mutantプラスミドを作成した。その後、レンチウイルスを用いて、野生型HSD11を含めて、HSD11欠損株に戻した細胞株を作成し、GFPの発現により、レンチウイルスでのHSD11およびそれら変異体の導入を確認し、それぞれの機能がHCVの生活環にどのように関わっているか検討した。オレイン酸、またはHCV感染で脂肪滴合成を亢進させたHuh7細胞にHSD11 siRNA、または脂肪滴局在シグナル欠損HSD11を導入したところ、 細胞内のLDの大きさおよび数が減少した。一方、野生型HSD11を発現させたところ、LDの数、大きさが増加した。さらに、野生型HSD11の発現によりHCV粒子産生の増加がみられたが、脂肪滴局在シグナル欠損HSD11ではHCV粒子産生が減少したことから、HSD11の脂肪滴局在性がHCV粒子産生に重要な役割を果たしている可能性が示唆された。 感染Vero細胞からRNA、DNAを抽出し、SARS-CoV-2の全長を網羅的に増幅させる約100種類のプライマーを用いて増幅し、イルミナシークエンサーでシークエンスを行なった。得られたリードをヒトゲノムにマッピングし、マップされなかったリードをSARS-CoV-2にマッピングするという手法で解析したところ、RNAではほぼゲノム全長にわたって増幅されており、一方でDNAでも増幅箇所があることが明らかになった。COVID-19罹患後の患者の大腸検体を用いて同様の解析を行ったところ、増幅箇所に規則性や共通性はないが、RNA、DNAともにランダムに増幅されていることが示された。これらのことはSARS-CoV-2が逆転写されている可能性を示唆している。
|
Strategy for Future Research Activity |
HCV粒子形成におけるHSD11の役割として、酵素としての活性、脂肪滴周辺膜への結合タンパクの輸送作用が想定された。当初、HSD11がウイルス粒子産生に重要な役割を持つことを示したが、HSD11は多くの臓器に広く分布している。一方、HSD11と近い構造を持ち、機能も類似しているHSD13は肝細胞に主に存在しているため、肝臓での病態に関与している可能性が考えられる。実際、HSD13は肝臓の線維化に関与していることが報告されている。そこで、HSD13とHCV粒子形成の関連性についても解析を始めた。HSD13欠損細胞を作成し、そこに酵素活性欠損、脂肪滴局在シグナル欠損等の各種HSD13の欠損体を発現させることにより、それぞれの機能がHCVの生活環、特に粒子形成にどのように関わっているか検討する。 マウスに経鼻的にSARS-CoV-2を肺に接種し、継時的に肺、肝臓、腸管を切除し、感染組織からRNAおよびDNAを抽出し、細胞内におけるSARS-CoV-2の存在様式について、まずqRT-PCRおよびqPCRで同定するとともに、次世代シークエンサーを用いて遺伝子発現解析を行なう。
|
Causes of Carryover |
当初、HSD11がウイルス粒子産生に重要な役割を持つことを示した。HSD11は多くの臓器に広く分布している。一方、HSD13はHSD11と近い構造を持ち、機能も類似 しているが、肝細胞に主に存在しているため、肝臓での病態に関与している可能性が考えられる。そこで、HSD13とHCV粒子形成の関連性についても解析を新たに始めたため、次年度使用額が生じた。
|
-
[Journal Article] Hepatocellular organellar abnormalities following elimination of hepatitis C virus.2023
Author(s)
Aoyagi H, Iijima H, Gaber ES, Zaitsu T, Matsuda M, Wakae K, Watashi K, Suzuki R, Masaki T, Kahn J, Saito T, El-Kassas M, Shimada N, Kato K, Enomoto M, Hayashi K, Tsubota A, Mimata A, Sakamaki Y, Ichinose S, Muramatsu M, Wake K, Wakita T, Aizaki H.
-
Journal Title
Liver Int.
Volume: 43(8)
Pages: 1677-1690
DOI
Peer Reviewed / Int'l Joint Research
-
[Presentation] Hepatocellular organelle and gene expression abnormalities following elimination of hepatitis C virus and carcinogenesis.2023
Author(s)
Haruyo Aoyagi, Hiroko Iijima, Koichi Watashi, Ryosuke Suzuk, Takahiro Masaki, Noritomo Shimada, Keizo Kato, Akihito Tsubota, Yuriko Sakamaki, Shizuko Ichinose, Kenjiro Wake, Masaya Sugiyama, Masashi Mizokami, Takaji Wakita, Hideki Aizaki.
Organizer
第3回 International Liver Conference 2023. 東京
Int'l Joint Research
-
[Presentation] Hepatocellular organelle and gene expression abnormalities following.2023
Author(s)
Aoyagi H, Iijima H, Kikuchi M, Gewaid HE, Matsuda M, Watashi K, Suzuki R, Masaki T, Shimada N, Kato K, Tsubota A, Mimata A, Sakamaki Y, Ichinose S, Muramatsu M, Wake K, Sugiyama M, Mizokami M, Wakita T, Aizaki H.
Organizer
29th International Symposium on Hepatitis C Virus and Related Viruses. Atlanta.
Int'l Joint Research
-
-
-
-
-