2022 Fiscal Year Research-status Report
B型・C型肝炎ウイルスの遺伝子変化の特徴と病態との関連性の解明
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21K07980
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
上田 佳秀 神戸大学, 医学研究科, 特命教授 (90378662)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | C型肝炎ウイルス / B型肝炎ウイルス / 遺伝子変異 / 遺伝子構造変化 |
Outline of Annual Research Achievements |
1. C型慢性肝炎患者の経過におけるC型肝炎ウイルス(HCV)遺伝子変異バイアスの特徴: C型慢性肝炎患者4例ならびに肝移植C型肝炎再発症例4例の抗HCV治療開始前ならびに治療終了後の血清におけるHCV遺伝子配列を1分子リアルタイム・シーケンサーならびに次世代シーケンサーを用いて同定した。HCV遺伝子配列の変化を経時的に比較して分子系統樹解析を行い、HCV遺伝子変異バイアスの特徴としてtransition変異が多く生じていること、中でもA→GとU→C変異の頻度が高いことを明らかにした。一方で、既知の薬物耐性変異はtransversion変異によっても生じており、変異が生じたHCVクローンが選択されて増殖していることを示した。以上の結果を論文発表した。 2. B型肝炎ウイルス(HBV)の遺伝子構造変化の意義: HCVで解析した方法と同様に、B型慢性肝炎患者10例の血清よりDNAを抽出し、HBV-DNAをPCRにて増幅し、1分子リアルタイム・シーケンサーならびに次世代シーケンサー解析を行った。その結果、大きな変化としてHBVのpreS/S領域ならびにC領域に欠失を認めるHBVの構造変化を多数例で認めた。このHBV構造変化と臨床経過の特徴との関連を解析し、HBe抗体陰性例や肝酵素高値例で多様な遺伝子欠失を認めていることを明らかにした。以上の結果を論文発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
おおむね計画どおりに進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
1. C型慢性肝炎の経過における遺伝子変化と病態との関連: 2021-2022年度の解析結果より明らかになった変異バイアスとは異なる変異パターンを示す遺伝子変異を中心に解析を行い、HCV感染、複製、増殖、治療抵抗性、治療後のウイルス増加の際に生じる遺伝子変化を明らかにする。さらに、免疫抑制状態である肝移植後と免疫能が正常な通常のC型慢性肝炎と比較検討し、免疫反応によって生じる変異バイアスの変化も明らかにする。 2. HCVレプリコンシステムを用いた遺伝子変化と病態との関連の解析: 上記研究にて同定されたHCV遺伝子変化の病態への関連をin vitroで明らかにするため、HCVレプリコンシステムを用いて解析を行う。遺伝子変異を導入したHCVクローンについて、Huh7.5細胞を用いたHCVレプリコン細胞の作成を行う。これらの細胞におけるHCV複製能や抗HCV薬の効果などの変化を解析する。 3. B型慢性肝炎患者の経過におけるHBV遺伝子変異バイアスの特徴: 1分子リアルタイム・シーケンサーならびに次世代シーケンサー解析結果を元に、分子系統樹解析を行い、HBV遺伝子変異バイアスを明らかにする。 4. B型慢性肝炎の経過におけるHBV遺伝子変化と病態との関連: 上記の解析結果より明らかになった変異バイアスとは異なる変異パターンを示す遺伝子変異を中心に解析を行い、HBV感染、複製、増殖、治療抵抗性、治療中や治療終了後に生じるHBV遺伝子変化を明らかにする。
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Causes of Carryover |
当該年度には、臨床データ解析とシークエンス結果解析、論文作成と投稿が主であったため、費用が少額で施行できる研究が多かった。次年度にはシークエンス解析ならびに細胞を用いた解析を行うため、使用額が多額となる予定であり、当該年度使用額の一部を次年度使用額とした。
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