2021 Fiscal Year Research-status Report
Development of a novel treatment for nonalcoholic steatohepatitis by targeting small intestinal fatty acid transporters
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21K07982
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Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
山本 安則 愛媛大学, 医学部附属病院, 講師 (20649066)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | NASH / パルミチン酸 / MTP |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、非アルコール性脂肪肝炎(non-alcoholic steatohepatitis : NASH)を対象に、肝脂肪毒性を有する食事由来パルミチン酸の小腸粘膜吸収を制御することで、NASHの脂肪化および線維化進展を抑制できるか否かを確認することである。 本年度は、まず食餌誘発性NASHモデルラットを作成し、末梢血および門脈血中の食事由来パルミチン酸吸収動態を評価した。その結果、NASHモデルラットでは、食後の血清カイロミクロン粒子数および門脈血中パルミチン酸濃度が、SDラットと比較し有意に上昇することが確認された。さらに、直接門脈からパルミチン酸を単回注入したところ、肝組織において、α-SMA等肝星細胞の活性化および肝線維化に関わる分子のmRNA量の増加が確認され、パルミチン酸による肝線維化誘導が示唆された。NASHモデルラット小腸組織を用いた検討では、小腸粘膜上皮において、長鎖脂肪酸の能動的取り込み受容体glycosylated CD36 、カイロミクロン合成の律速酵素であるmicrosomal triglyceride transfer protein (MTP)を代表とする一連の腸管脂肪酸輸送関連蛋白が過剰発現していることを証明した。よって、NASH腸管では食事性脂肪酸吸収が亢進するメカニズムが存在し、小腸脂肪酸吸収関連蛋白はNASHの病態進展へ関与する可能性が確認された。 申請者は、小腸脂肪酸吸収関連蛋白の中で特にMTPに着目し、小腸特異的MTP阻害薬を用いた小腸パルミチン酸吸収阻害実験を計画し、継続中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当該年度の結果を基に、小腸粘膜におけるMTPに着目し、NASHモデルラットに対し小腸特異的MTP阻害薬を用いた小腸パルミチン酸吸収阻害実験を計画した。しかし、当初使用を予定していたMTP阻害薬の販売が急遽中止となり、一時実験遂行困難となった。ただその後、基礎実験データがある新しい小腸特異的MTP阻害薬を見出すことができ、購入もできた。問題点として、ラットよりマウスでの基礎データが多いこと、試薬が非常に高額であることがあげられたため、それらを加味しコリン欠乏高脂肪メチオニン減食によるNASHモデルマウスを作成し、NASHモデルマウスによる小腸パルミチン酸吸収阻害実験に切り替えた。また、同時にMTP-KOマウスの作成に着手した。どちらも順調に実験計画が進んでおり、2022年6月初旬よりNASHモデルラットに対し小腸特異的MTP阻害薬の投与実験が開始できる予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、まず以下の実験計画に基づき研究を遂行する。作成中の腸上皮特異的MTP欠損マウスの作成が予定通りできた場合は、最終年度に食餌誘発性NASH発症実験を行う。 1. 小腸特異的MTP阻害によるin vivoにおける腸管パルミチン酸吸収抑制と肝炎改善効果の検討:既報に準じ、コリン欠乏高脂肪メチオニン減食(CDAHFD食)を14週間摂取させNASHモデルマウスを作成する。それを、MTP阻害剤(SLx-4090)投与群、非投与群に分け、以下の比較検討を行う。 a) 食後トリグリセリド分泌の評価:小腸特異的MTP阻害薬(SLx-4090)を強制注入し、12時間絶食の後、オリーブオイルを経口投与し、投与前・投与2時間後・投与4時間後の血漿TG濃度を測定する。血中LPL(リポタンパクリパーゼ)の活性をブロックするためにTyloxapolを500㎎/㎏で静脈投与し、投与2時間後に上記負荷試験を行い、血漿トリグリセリド、遊離脂肪酸、コレステロール濃度を測定する。 b) 小腸脂肪酸輸送蛋白の発現調整解析:小腸全組織を採取し各輸送蛋白(CD36、MTTP、FABP、FATP4など)やカイロミクロン構成リポ蛋白についてreal-time PCR法によりmRNA量を、Western blot法により蛋白量を測定する。 c) 肝の組織学的解析 (NASH重症度評価):炎症性ケモカインのマーカーとしてCxcl2、Ccl2などを、肝星細胞の線維化マーカーとしてαSMA、TGFβなどのmRNA量を評価する。また、肝全体のコラーゲン沈着、αSMA局在を免疫染色で評価し、肝炎の活動性(NASスコア)、線維化進展を比較する。を確認する。
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Causes of Carryover |
次年度使用が生じた理由:当該年度予算に消耗品として計上した小腸特異的MTP阻害試薬が、急遽生産および販売中止となり予算を使用しなかった。その後、新しい小腸特異的MTP阻害薬を選定し購入を決定したが、選定に時間を要し研究進行の遅れが生じた。本試薬の最大使用時期が次年度にずれ込んだため、その購入費用を次年度予算に繰り越した。 使用計画:消耗品として①NASHモデルマウス作成費用(C57BL/6マウスの購入、飼育飼料の購入)、②動物実験器具購入、③小腸特異的MTP阻害薬(SLx-4090)の購入(実験必要量の購入費 400,000円)、⑤蛋白解析試薬および組織学的解析のための免疫染色試薬の購入、⑥MTP flox/floxマウス(500,000/匹)の購入を計上した。次に、本研究分野の情報収収集、研究成果発表のため、国内学会、国際学会への出張旅費、学会参加費を計上した。その他、脂肪酸分析に外部委託が必要であり、受注費用を計上した。人件費、謝金の計上はない。
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