2021 Fiscal Year Research-status Report
大腸がん微小環境を構築する分泌型タンパク質を標的とした治療法の開発
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21K07985
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Research Institution | Sapporo Medical University |
Principal Investigator |
山本 英一郎 札幌医科大学, 医学部, 訪問研究員 (60567915)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 大腸がん / 微小環境 / がん線維芽細胞 / AEBP1 |
Outline of Annual Research Achievements |
臨床検体からの線維芽細胞の採取:内視鏡的に切除した大腸がん4例、腺腫2例、正常大腸4例より新たに線維芽細胞を採取した。 AEBP1の機能解析:大腸がんより採取したがん関連繊維芽細胞(CAF)を用いて、AEBP1の機能解析を行った。AEBP1のノックダウンはCAFの増殖を抑制することをMTTアッセイにより明らかにした。次にCAFが大腸がん細胞の遊走・浸潤能に与える影響をBoyden Chamberアッセイにより解析した。Upper chamberに大腸がん細胞株、Lower chamberにCAFを配置して解析した結果、CAFは大腸がん細胞の遊走・浸潤を促進した。一方、CAFのAEBP1をノックダウンした場合、大腸がん細胞の遊走・浸潤の抑制が認められた。次にCAFのAEBP1をノックダウンし、遺伝子発現プロファイルに与える影響をマイクロアレイにより解析した。Gene Set Enrichment Analysis (GSEA)の結果、AEBP1ノックダウンはE2F標的遺伝子、G2/Mチェックポイント、mitotic spindleなど細胞周期に関連する遺伝子の発現に大きく影響を与えることが示された。 AEBP1と相互作用する分子の同定:V5タグ融合AEBP1蛋白をHEK293細胞に強制発現させ、cell lysateを回収して質量分析を行った。その結果、AEBP1と相互作用する候補分子23種類を同定した。 臨床検体におけるAEBP1の解析:The Cancer Genome Atlasの大腸がんのRNA-seqデータを解析した結果、AEBP1の高発現は大腸がんの予後不良と相関することが明らかとなった。またAEBP1の発現は、ACTA2、FAP、COL1A1など他の繊維芽細胞マーカー遺伝子の発現と強い相関を示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
臨床検体から新たなCAFを採取・樹立し、実験系を充実させることができた。またCAFにおけるAEBP1の分子機能解明の糸口となる結果を、マイクロアレイ解析から得ることができた。AEBP1と相互作用する分子のスクリーニング実験を予定通り行った。また臨床検体におけるAEBP1発現の特徴を明らかにすることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
臨床検体からの正常繊維芽細胞ならびにCAFの採取と樹立を継続する。CAFにおけるAEBP1の分子機能をさらに検証すべく、AEBP1が細胞周期関連遺伝子に与える影響の検証を行う。また今年度得られた、AEBP1と相互作用する候補分子について、解析を進める。CAFのAEBP1発現が、腫瘍形成や浸潤に与える影響を、in vivo実験により明らかにする。
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Causes of Carryover |
予定していた学会出張が、全てリモートによる参加となったため、旅費を使用しなかった。また実験の大半を自分で行う事ができたため、人件費の支出がなかった。次年度は、学会出張ならびに、実験補助員の謝金として使用する予定である。
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