2023 Fiscal Year Research-status Report
大腸がん微小環境を構築する分泌型タンパク質を標的とした治療法の開発
Project/Area Number |
21K07985
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Research Institution | Sapporo Medical University |
Principal Investigator |
山本 英一郎 札幌医科大学, 医学部, 訪問研究員 (60567915)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 大腸がん / AEBP1 / がん線維芽細胞 / がん微小環境 |
Outline of Annual Research Achievements |
内視鏡的に切除した大腸がん2例、腺腫2例、正常大腸2例より新たに線維芽細胞を採取した。AEBP1は腫瘍間質、とくにがん線維芽細胞(CAF)に高発現していた。AEBP1発現は腫瘍径、リンパ節転移、ステージ、分化度、再発など相関を示すことから、AEBP1が腫瘍の進展および悪性化に関わることが示唆された。また、AEBP1発現はCOL1A1など多くのコラーゲンファミリー遺伝子の発現と高い相関を示すことがTCGAなどのデータ解析から明らかとなった。またAEBP1発現が、細胞外マトリックスシグナルと高い相関を示すことが明らかとなった。臨床検体を用いてコラーゲンをピコシリウスレッド染色した結果、AEBP1とコラーゲンが腫瘍間質において共局在することを確認した。またCD8陽性Tリンパ球の腫瘍内浸潤と、腫瘍間質のAEBP1発現は逆相関を示した。 臨床検体より採取したCAFを用いて機能解析を行った。AEBP1ノックダウンによりCAFの増殖能が低下することをcell viabilityアッセイから明らかにした。またAEBP1ノックダウンによりCAFの細胞外マトリクス再構成能が低下することを、コラーゲンゲル収縮アッセイにより明らかにした CAF由来のAEBP1ががん細胞に与える影響を解析するため、AEBP1をノックダウンしたCAFとがん細胞を用いて共培養実験を行った。その結果、CAFのAEBP1ノックダウンが、がん細胞の遊走・浸潤能を低下させることが、Boydenチャンバーアッセイおよび3次元コラーゲンゲルアッセイから明らかとなった。AEBP1を過剰発現させたCAFとがん細胞を免疫不全マウスに共移植した結果、対照群と比較してxenograft腫瘍の増大が認められた。摘出後の腫瘍を免疫組織染色解析した結果、間質の増大やコラーゲンの高発現が認められた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
臨床検体から新たなCAFを採取・樹立し、実験系を充実させることができた。臨床検体におけるAEBP1発現の特徴を明らかにすることができた。CAF由来のAEBP1が、CAFを活性化させるとともに、腫瘍進展を促進する働きがあることを明らかにした。またAEBP1発現が腫瘍内リンパ球浸潤を抑制しうる可能性を見出した。
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Strategy for Future Research Activity |
臨床検体からの正常繊維芽細胞ならびにCAFの採取と樹立を継続する。CAFにおけるAEBP1の分子機能をさらに検証すべく、AEBP1が細胞周期関連遺伝子に与える影響の検証を行う。AEBP1発現と腫瘍内リンパ球浸潤との関わりを、臨床検体および培養細胞を用いた解析から明らかにする。
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Causes of Carryover |
予定していた学会出張が、全てリモートによる参加となったため、旅費を使用しなかった。次年度は、実験の消耗品、学会出張、実験補助員の謝金として使用する予定である。
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