2022 Fiscal Year Research-status Report
キネシン分子モーターを構成するKAP3の異常が胃印環細胞癌の発生に関与する機序
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21K07993
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Research Institution | Bukkyo University |
Principal Investigator |
安居 幸一郎 佛教大学, 保健医療技術学部, 教授 (30323695)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 印環細胞癌 / KAP3 / キネシン / 分子モーター / ラミニン / 基底膜 |
Outline of Annual Research Achievements |
胃の印環細胞癌(signet ring cell carcinoma)は癌細胞内に粘液を種々の程度貯留する印環型の細胞からなる腺癌である。細胞間接着が喪失し、腺管形成はほとんどみられないという特徴的な病理組織像を示す。胃癌全体の発生率が低下しているのに対して相対的に増加しており、若年者に発生することが比較的多い。進行すると、びまん性に浸潤して、いわゆるスキルス胃癌になる。腹膜播種や癌性リンパ管症を起こしやすく、予後不良で、一般に化学療法に抵抗性である。それゆえ、その病態解明と新規治療法の開発が待望されている。 本研究は印環細胞癌の新たな発癌機序を解明することを目的としている。これまでに、遺伝子発現プロファイルを探索したところ、キネシンモータータンパク質KIF3を構成するkinesin-associated protein 3 (KAP3)の遺伝子発現が、印環細胞癌で特異的に低下していることを発見した。キネシンは細胞内物質輸送や細胞分裂に重要な働きをしているモータータンパク質のひとつである。 KAP3の発現低下が印環細胞癌の発生・進展に関与する機序を解明するために、CRISPR/Cas9によるゲノム編集でKAP3ノックアウト(KO)細胞を樹立した。 今年度は特に、KAP3-KO細胞では、基底膜の主要な構成成分であるラミニンのゴルジ装置以降の細胞内輸送が阻害されていることを見出した。この知見から、KAP3が欠失するとラミニンが輸送されないため、印環細胞癌で基底膜が形成されない可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
CRISPR/Cas9によるゲノム編集でKAP3ノックアウト(KO)細胞を樹立することに成功した。そして、KAP3-KO細胞では、基底膜の主要な構成成分であるラミニンのゴルジ装置以降の細胞内輸送が阻害されていることを発見できたから。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究で、KAP3-KO細胞ではRhoA活性が低下するため細胞間接着が減弱すること、また基底膜の重要な構成成分であるラミニンの細胞内輸送が阻害されていることを明らかにできた。細胞株でのこれらの知見に基づいて、胃印環細胞癌の臨床検体を使用して、KAP3とRhoA、およびラミニンの発現を免疫組織化学法で調べる。
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Causes of Carryover |
実験が順調に進んだため、試薬代が見込んでいた額よりも少なく済んだ。その差額は次年度の実験費と物品費に繰り越す。
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