2022 Fiscal Year Research-status Report
非典型PKC分子による肝内胆管形成の分子学的制御機構
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21K08002
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
工藤 洋太郎 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (90608358)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中川 勇人 東京大学, 医学部附属病院, 届出研究員 (00555609)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | アラジール症候群 / 肝内胆管形成不全 / 非典型Protein Kinase C分子 |
Outline of Annual Research Achievements |
アラジール症候群(ALGS)は、肝内胆管形成不全を特徴とする多臓器に表現型を呈する先天性疾患で、JAG1遺伝子が95%、NOTCH2遺伝子が4%の症例で責任遺伝子とされている。しかしながら、ALGSの症状には大きな個人差があり、肝硬変に進行する症例や肝移植が必要となる症例も存在する。 申請者らは、Alb-CreマウスとPrkcif/f, Prkczf/f, Prkcif/f;Prkczf/fマウスを交配し、肝特異的に非典型Protein Kinase C (PKC)分子の欠損マウスを作成した。この欠損マウスでは、肝内胆管形成不全と黄疸を伴う胆汁うっ滞型肝障害が発生し、ALGSの肝病変を再現できることが判明した。 従来のALGSモデルマウスは、胆管欠如の表現型がNotchシグナル抑制に依存するものであり、胆管形成におけるNotchシグナル伝達の重要性を強調してきた。しかし、この新たな欠損マウスでは、Notchシグナルの抑制を認めず、肝内胆管形成の新しい制御機構が関与していることが示唆された。また、申請者らは、この欠損マウスを長期飼育したところ、肝腫瘍が自然発生することを確認した。 この研究成果は、従来の遺伝子変異の有無では説明できないALGSの個人差や重症度に対する新たな理解を提供し、患者の治療や生活の質の向上につながる可能性がある。またALGS患者の生命予後やQOLを決定する肝病変の修飾因子の解明に寄与する可能性がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本マウス肝組織のNotchシグナル抑制の有無をRNA-seq、real-time PCR、ウェスタンブロットで解析し、Notchシグナルが抑制されていないことを確認した。長期生存したマウスで肝腫瘍が自然発生し、組織型は肝細胞腺腫であった。これにより、非典型型Protein Kinase C分子が肝細胞系列の腫瘍形成にも関与する可能性が示唆された。
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Strategy for Future Research Activity |
予定通り胆管オルガノイドを樹立して解析を加えたい。前検討の結果では本マウスから樹立したオルガノイドは安定継代・維持が困難であったので、野生型と発現遺伝子群の比較をおこなう。 また胎生期の肝内胆管発生異常の解析をおこない、発生のどの時期から肝内胆管形成が障害されているかを確認する。
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Causes of Carryover |
本年度はマウスの搬入・維持が予定より遅れたためいくつかの実験計画が予定通りに進行しなかった。次年度に実施予定であるため次年度使用額が発生した。具体的にはマウスの維持および胎仔の組織学的および遺伝子、タンパクの発現解析実験に使用予定である。
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