2023 Fiscal Year Research-status Report
非典型PKC分子による肝内胆管形成の分子学的制御機構
Project/Area Number |
21K08002
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
工藤 洋太郎 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (90608358)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中川 勇人 東京大学, 医学部附属病院, 届出研究員 (00555609)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | アラジール症候群(ALGS) / 非典型型Protein Kinase C / 肝内胆管形成不全 |
Outline of Annual Research Achievements |
アラジール症候群(ALGS、指定難病297)は多臓器に影響を及ぼす先天性疾患であり、肝内胆管形成不全という特徴的な肝病変を伴います。遺伝子レベルでは、ほとんどの症例でJAG1遺伝子、少数でNOTCH2遺伝子の変異が見られますが、これだけでは症状の個人差を十分に説明できません。研究では、Alb-CreマウスとPrkcif/f;Prkczf/fマウスを交配し、非典型型Protein Kinase C(aPKCs)の両遺伝子欠損(DKO)マウスを作成、このマウスがALGSの肝病変を再現することを明らかにしました。これにより、肝病変においてaPKCsが重要な役割を果たしていることが示唆されています。
DKOマウスの観察から、胆汁うっ滞を伴う肝障害、胆汁酸の調整異常、肝臓の大型化など、肝病変の進行を示す多くの表現型が観察されました。さらに、胆管の欠如が肝臓内で確認され、これは肝内胆汁うっ滞に繋がると考えられます。興味深いことに、DKOマウスの肝組織ではNotchシグナリングが抑制されていないことから、胆管形成における新しい制御機構の可能性が示唆されました。RNAシーケンス分析により、肝臓の遺伝子発現における顕著な違いが明らかになりました。特に、胆汁うっ滞への補償反応としてOatp1遺伝子の発現増加が見られました。
本研究から、非典型型Protein Kinase C分子の欠損がALGSの肝病変における重要な修飾因子であることが示唆され、肝病変の治療法開発に向けた新たな一歩となります。今後の課題として、これらの知見をALGS患者の治療にどのように活用できるかを検討する必要があります。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
本研究プロジェクトの進行に遅れが生じている主な要因は、医師としての臨床業務が非常に多忙を極めたことにあります。特に、私の役職が病院業務に専念する必要性が生じたため、研究への貢献度が一定期間低下いたしました。加えて、実験に不可欠な試薬の調達にも予期せぬ遅延があり、これがさらなる時間のロスとなりました。これらの状況が重なり、計画された研究スケジュールを維持することが困難となりました。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究では、胆管オルガノイドの確立と解析を予定通り進めます。前回の検討で発現遺伝子群が不安定だったため、安定継代・維持が困難であったオルガノイドの改善を図ります。これには、オルガノイドの培養条件を最適化し、また野生型との比較分析を通じて、欠損遺伝子群の機能的役割を明らかにすることが含まれます。同時に、胎生期の肝内胆管発生異常に注目し、発生初期段階からの障害されているプロセスを詳細に解析することで、胆管形成障害の起点となるメカニズムを特定します。実験プランとしては、時間系列に沿った詳細な組織学的および分子生物学的解析を実施し、障害の進行パターンを明確にします。これにより、肝臓疾患の治療戦略の開発につながる洞察を得ることを目指します。
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Causes of Carryover |
研究遂行に想定以上に時間を要して当初の期間内に完了しなかったため次年度使用額が生じた。 予定されている実験試薬、実験動物費用などに充てる予定である。
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