2021 Fiscal Year Research-status Report
RNA methylation of T-UCRs regulates colon cancer progression
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21K08007
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
桑野 由紀 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(医学域), 講師 (00563454)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 大腸がん / RNAメチル化 / RNAプロセシング / 超保存領域 |
Outline of Annual Research Achievements |
高等生物ゲノムにのみ100%保存された超保存領域(ultraconserved region: UCR)はヒトゲノムに481か所存在するが、その生理機能は未だ不明である。これまでに、超保存領域より転写されるRNA群 (Transcribed-UCRs: T-UCRs)の一部は、がん悪性化を引き起こす“oncogenic RNA”であることを見出している。哺乳類ゲノムのみ完全保存されたT-UCRが、がん細胞の核に蓄積する理由を明らかにするため、DNA障害や細胞ストレスに応答しリバーシブルなRNA修飾であるアデノシンN6位のメチル化(Methyl-6-adenosine(m6A))によるT-UCRの動態の解明を目的とした。 本研究では「がん細胞に特異的な超保存領域のRNAメチル化スイッチがトリガーとなる新規のがん悪性化メカニズム」を目標に、これまでに、1)TRA2B遺伝子領域のUCRを含むRNAの大腸がん細胞におけるRNAメチル化の検出、2)RNAメチル化酵素Mettl3、Mettl14、RNAメチル化関連因子YTHDFファミリー及びYTHDCファミリーの大腸がんにおける発現スクリーニング、を行い、大腸がんにおいて発現亢進し、RNAメチル化を促進する因子を同定できた。さらに、組織中のm6Aメチル化を検出するm6A RNA dot blotを確立し、各種がん細胞におけるRNAメチル化量を比較検討した。今後は、ヒトiPS細胞より形成した腸管オルガノイドを用い、分化におけるRNAメチル化ステータスの検討等を行い、RNAメチル化の大腸がんにおける臨床医学的意義の解明を行う。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
スプライシング因子SR(Ser/Arg)タンパク質ファミリーのひとつTRA2B遺伝子領域の超保存領域(UCR)から転写されるRNAは、エクソン2に中途ストップコドンを持つため、タンパク質に翻訳されず正常組織にはほとんど発現しない。これまでの研究計画において、TRA2BのUCR RNAは大腸がん組織に高発現し、過剰発現細胞では細胞増殖と浸潤能が亢進すること、さらにマウス腫瘍移植モデルにて腫瘍形成を有意に促進することを見出した(Kuwano et. al., Sci Rep. 2021)。また、T-UCR安定過剰発現細胞を用い、T-UCRは核内RNA結合タンパク質hnRNP AやSAF-A等のグアニン四重鎖(G-quadruplex)構造を調節する核内因子と結合することを発見し報告した(Nishikawa et. al., Biochim Biophys Acta Gene Regul Mech., 2021)。また、大腸がんにおけるRNAの修飾が、これらの超保存領域を含むRNAの安定性や局在に影響を与えている可能性を見出している。今後も研究計画に従って、T-UCRをビオチンラベルし、RNAメチル化酵素複合体と細胞周期依存的に相互作用する因子を同定する。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度の研究計画では大腸がんにおけるRNAメチル化ステータスの検討を行い、大腸がんの悪性化にRNA修飾が関与する可能性を見出すことが出来た。したがって本年度は、細胞内メカニズムを明らかにするため、超保存領域のRNAメチル化を選択的に阻害する、RNA脱メチル化酵素を付加したターゲティングベクターシステムの構築を行っている。さらに、新たにRNAメチル化の大腸がんにおける臨床医学的意義を詳細に検討するため、ヒトiPS細胞(Thermo Fisher Sci社)より形成した腸管オルガノイド(ベリタス社プロトコル)を用い、分化におけるRNAメチル化ステータスを解析する。また、これまでの研究経過によって特定した大腸がん特異的RNAメチル化部位をもとに、大腸がん細胞の悪性化フェノタイプを阻害するアンチセンス核酸配列のスクリーニングを予定している。
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Causes of Carryover |
2年目の研究計画にヒト大腸がん組織検体を用いた次世代シークエンス(RNA-seq)解析を控えており、解析完了にまとまった予算の必要性が予想されたため次年度使用額が生じた。今年度分として請求した研究費と合わせて、本年度は研究計画の予定通り、RNA-seqを完了させ、その費用に使用する予定である。
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Research Products
(2 results)