2022 Fiscal Year Research-status Report
周産期心筋症の病態-遺伝要因・心筋炎症・血管障害-解明研究
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21K08043
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Research Institution | National Cardiovascular Center Research Institute |
Principal Investigator |
神谷 千津子 国立研究開発法人国立循環器病研究センター, 病院, 医長 (10551301)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
徳留 健 国立研究開発法人国立循環器病研究センター, 研究所, 室長 (00443474)
大谷 健太郎 国立研究開発法人国立循環器病研究センター, 研究所, 室長 (50470191)
吉松 淳 国立研究開発法人国立循環器病研究センター, 病院, 部長 (20221674)
高橋 篤 国立研究開発法人国立循環器病研究センター, 研究所, 部長 (50392014)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 周産期心筋症 / 妊娠・出産 / 妊娠高血圧症候群 / 心不全 / バイオマーカー |
Outline of Annual Research Achievements |
周産期心筋症は、心筋疾患既往のない女性が、妊娠中から産後にかけて心収縮機能の低下と心不全を発症する、特異な心筋症である。日本における発症率は、推定約1.5万分娩に1例と高くはないが、母体間接死亡原因の上位疾患に挙げられる。本研究者は、全国質問紙調査(平成21年)を端緒に、全国多施設患者レジストリを創出し、当該疾患の臨床-基礎研究を継続して行ってきた。これまでの研究蓄積から、周産期心筋症の病態として、①遺伝要因、②心筋炎症、③血管障害の三要素が挙げられる。そこで、本研究では、臨床情報・試料(集積済)を用いて、これら三要素について心機能予後との関連をより詳しく解析することを目的とする。①については、令和3年度に、アメリカ、ドイツとの国際共同により、周産期心筋症と診断された469人の女性を対象に、心筋症関連67遺伝子について次世代シーケンサーによる解析・報告を行った(Circulation 2021)。 周産期心筋症の心筋形態は拡張型心筋症に類似するが、異なる点の一つとして、予後の差違が挙げられる。拡張型心筋症は、生涯疾患であることが多いが、周産期心筋症の6割は、診断・治療開始から1年以内に心機能が正常範囲に回復するうえ、その中の多くが、薬物治療中止後も、心機能を保つ。しかしながら、残りの4割は心機能低下が持続したり、次回妊娠時に再発したりすることが知られ、長期予後不良である。これまでに、長期予後予測因子として、診断時心機能やBNPなどのいくつかのバイオマーカーの可能性が報告されている。令和4年度は、主に②心筋炎症と長期予後について少数例で検討した。急性期や亜急性期における心筋組織の炎症病変や血中の炎症性マーカーと、慢性期の心機能予後との関連が示唆される。症例を増やし、また、炎症性マーカーの時系列変化を含め、引き続き検討を重ねる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
周産期心筋症の遺伝要因の検討においては、R4年度は新たに患者検体を8例集積し、ゲノム解析を行っている。診断から1年以内の患者検体において、炎症性バイオマーカーや血管障害性バイオマーカーの測定を行い、時系列解析を行っている。
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Strategy for Future Research Activity |
周産期(産褥性)心筋症は、健康な妊産婦に発症して母子の生命を脅かす重篤な疾患であるが、産科-循環器科の境界疾患であり、これまでの患者調査や医療は不十分であった。R4年度の本研究では、PILOT的に、少数の患者において、臨床情報・試料を用いた心筋炎症や血管障害に関連するバイオマーカーと、心機能予後と比較検討している。今後、症例数を増やして検討する。遺伝要因も含め、得られる成果は、産科や循環器科などの関連各科専門医に向けて広く発信し、ガイドラインに反映することで、早期診断率や予後の向上に結びつける。病態解明研究により、疾患特異的治療の開発も計画する。
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Causes of Carryover |
データクリーニングと検体測定を令和5年度に予定したため
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