2021 Fiscal Year Research-status Report
組織透明化による循環器疾患の解析ーミクロレベルの立体構造と微小環境の可視化に挑む
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21K08095
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Research Institution | National Cardiovascular Center Research Institute |
Principal Investigator |
大郷 恵子 国立研究開発法人国立循環器病研究センター, 病院, 医長 (30601827)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松山 高明 昭和大学, 医学部, 教授 (40349113)
大郷 剛 国立研究開発法人国立循環器病研究センター, 病院, 部長 (80617077)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 組織透明化 / 病理 / 立体画像 / 心筋組織 |
Outline of Annual Research Achievements |
循環器は心臓の拍動(電気活動と筋肉の収縮・弛緩)、血管の収縮・拡張など独特な動的機能を有しており、その機能や疾患の病態機序を考える上で病理学的組織構造を三次元的に捉えることが重要である。しかし既存のイメージングや従来の連続切片重ね合わせによる組織学的立体構築法には多くの限界があり、ヒト組織の空間情報を保持したまま細胞レベル・微細構造レベルの観察を十分な解像度で行うことは不可能であった。そこで本研究は、それらを可能にする新技術であるCUBIC透明化液による組織透明化法と免疫染色を組み合わせ、循環器疾患の病変をこれまでにないミクロレベルで立体的に可視化して特徴を調べることで、新たな視点で循環器病の成り立ちや構造と機能の関連について明らかにすることを目指している。 2021年度は、ヒトの心臓および肺組織における透明化のプロトコール確認を行った。ヒト心筋・肺組織へのこの技術の応用はまだ非常に報告が少なく、色々な条件のもとで健常例を用いて検討を行った。特に心筋は密で脂質に富み透明化されにくい組織であるため、従来のCUBIC液に加え最近報告されたCUBIC-HL液も使用して比較した。その結果、CUBIC-HL液を使用した場合、より透明化が得られるもののその後の免疫染色への反応性が失われ不利であることがわかった。一方、従来のCUBIC液では処理後の免疫染色でターゲットとするタンパク質への染色性が確認できた。このため心筋についてはCUBIC液を用いて研究を進めている。一方、肺組織はCUBIC処理でも免疫染色の反応性が弱く、CUBIC-HL処理では心筋同様の反応であった。さらなるプロトコールの修正が必要である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
検討を行ったヒト肺組織ではCUBIC処理でも免疫染色の反応性が弱く、鮮明な良質な画像を得るためにはさらなるプロトコールの修正が必要である。また新型コロナウイルスのパンデミックのため、他施設の研究協力者が移動できないなどの影響も受けたため、やや遅れているとの評価とした。
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Strategy for Future Research Activity |
心筋組織では有用性が確認できたプロトコールを基本とし、病的心筋(肥大型心筋症)サンプルの透明化・免疫染色による画像取得を進め、立体構造の観察と健常心筋との比較を行う予定である。肺組織はまず免疫染色が適切にターゲットのタンパク質を染色できるようプロトコールの最適化に努める。
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Causes of Carryover |
2021年度は、免疫染色に用いる一次抗体、詳細な組織観察のための物品、参考書籍の購入を行った。新型コロナウイルスのパンデミックのため、他施設の研究協力者が移動できなかったことや、施設内の研究協力者の異動などの影響があり、残額が生じた。2022年度は、移動も緩和される見込みで、心筋組織の立体画像化を本格化させると共に、肺組織のプロトコール調整も行う予定で、2021年度分と合わせて執行する予定である。
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