2022 Fiscal Year Research-status Report
心不全におけるグルタミン代謝制御機構の解明と新規治療戦略の構築
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21K08105
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
小林 成美 神戸大学, 医学部附属病院, 特命准教授 (20379415)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
杜 隆嗣 神戸大学, 医学研究科, 特命准教授 (50379418)
長尾 学 神戸大学, 医学研究科, 特命助教 (70866029)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | グルタミン分解 / 心不全 / 心筋代謝リモデリング |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究で注目したグルタミンは血中に最も豊富に存在するアミノ酸で“グルタミン分解”と呼ばれる代謝経路を通して、グルタミン酸を経てα-ケトグルタル酸 (alpha-ketoglutarate:αKG)としてTCA回路へ流入する。本経路は腫瘍学分野では精力的に研究されており、種々の固形腫瘍は増殖に必要な核酸・脂質・タンパク質を構成する炭素・窒素の供給源としてグルタミンを利用している。そのため、グルタミン分解の阻害薬には、がんの増殖抑制効果が認められ、他の抗がん剤との併用で治験段階にあるものも存在する。このことから、心筋細胞の肥大や心臓線維芽細胞の増殖といった心臓リモデリングの進展においても、グルタミン代謝機構が関与しているという仮説を立て、研究を進めた。新生仔ラット心筋細胞・心臓線維芽細胞の初代培養を行い、安定同位体標識したグルタミンを添加することで代謝物の追跡実験(stable isotope tracing)を行った。アンギオテンシンⅡで刺激した群ではグルタミン由来のアスパラギン酸がいずれの細胞においても増加しており、グルタミン分解の阻害薬であるBPTESによって減少した。アスパラギン酸は細胞の成長・増殖に必要となる核酸や蛋白質合成に必須であることから、心臓リモデリングにおいてもグルタミン分解を介したアスパラギン酸の供給が、病態に関与していることが示唆された。今後、実際にグルタミンに由来するアスパラギン酸が不全心筋における核酸の構成要素として、増加しているかどうかを検証していく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
予定していた実験計画どおりに進行している。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究では心不全における代謝リモデリングは主に糖代謝・脂肪酸代謝に焦点をあてた研究が行われてきたが、近年ではケトン体をはじめとした様々なエネルギー基質の役割を解明した研究成果が発表されている。申請者らは本研究をとおして、グルタミンを中心としたアミノ酸代謝にフォーカスした研究を推進していく。候補の一つとして、バリン、ロイシン、イソロイシンからなる分岐鎖アミノ酸を考えている。
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Causes of Carryover |
実験が順調にすすんだことで消耗品の購入が減らせたため。
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