2021 Fiscal Year Research-status Report
心血管メカノセンサーTRPV2の低酸素誘発性肺高血圧症への関与解明と治療法開発
Project/Area Number |
21K08108
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
中村 一文 岡山大学, 医歯薬学域, 准教授 (10335630)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鵜殿 平一郎 岡山大学, 医歯薬学域, 教授 (50260659)
片野坂 友紀 岡山大学, 医歯薬学域, 講師 (60432639)
赤木 達 岡山大学, 医歯薬学域, 助教 (60601127)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 肺高血圧症 / 肺動脈平滑筋細胞 / TRPV2 / 低酸素症 / メカノセンサー / 肺血管リモデリング / 血管平滑筋特異的TRPV2欠損マウス / MTTアッセイ |
Outline of Annual Research Achievements |
持続的な低酸素症は肺血管収縮を引き起こし、肺血管リモデリングや肺高血圧症(PH)の原因となる。しかし、血管収縮が血管リモデリングにつながる正確なメカニズムはまだ解明されていない。TRPV2は、Ca2+透過性カチオンチャネルであり、血管平滑筋の膜伸張に応答するメカノセンサーである。本研究の目的は、低酸素誘発性PHの発症における血管平滑筋のTRPV2の役割を明らかにすることである。血管平滑筋特異的 TRPV2 欠損マウス(smTRPV2-/-)を作製したところ、定量的PCRにより、smTRPV2-/-マウスから分離した肺動脈平滑筋細胞においてTRPV2が欠損していることが明らかとなった。フロックスコントロール(smTRPV2flox/flox)マウスとsmTRPV2-/-マウスを低酸素および正常酸素に5週間曝露したところ、低酸素によるPHはsmTRPV2-/-マウスではsmTRPV2flox/floxマウスと比較して有意に改善された。低酸素による肺動脈の完全筋肉化の割合は、smTRPV2-/-マウスはsmTRPV2flox/floxマウスに比べ有意に低かった。MTTアッセイにより、低酸素はsmTRPV2flox/floxマウスおよびsmTRPV2-/-マウスの両方の培養肺動脈平滑筋細胞の増殖を促進することが明らかになった。しかし、smTRPV2-/-PASMCsの低酸素による増殖率は、smTRPV2 flox/flox -肺動脈平滑筋細胞のそれよりも有意に小さかった。上記よりTRPV2は、肺動脈平滑筋細胞の不適切な増加とともに、低酸素によるPHの発症に重要な役割を担っていることがわかった(本結果を2021年、2022年日本循環器学術集会において発表した)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ノックアウトマウスを用いた検討にて、TRPV2が低酸素による肺高血圧症の発症に重要な役割を担っていることがわかった。 今後細胞を用いて詳細な機序を解明していく必要があるが、肺動脈平滑筋細胞のストレッチによる細胞内カルシウム濃度の増加がTRPOV2ノックアウトマウスの細胞では減弱しているデータをとることにも成功した(発表準備中)。
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Strategy for Future Research Activity |
現在、トラニラストによる薬理学的なTRPV2の抑制効果が、低酸素誘発性肺高血圧症を治療できるか、肺血管のリバースリモデンリング効果をもつか、マウスにて検討中である。 この結果が得られれば、トラニラストのドラッグリポジショニングを示すとともに、TRPV2が低酸素誘発性肺高血圧症の治療のための新しいターゲットであることを示すことができる。
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Causes of Carryover |
基礎実験において試薬等計上よりも実際にかかった費用が少なく次年度繰り越しとなったが、次年度、実施する実験において係る消耗品等に充当する予定である。
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