2021 Fiscal Year Research-status Report
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21K08109
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
松下 健一 熊本大学, 病院, 特任教授 (10317133)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 循環器 / 心不全 / 肥満 / 左房 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の初年度である令和3年度は、臨床データの解析を主に遂行した。急性心不全患者における肥満症例の割合を調査し、現在社会問題となっている繰り返す心不全再入院に肥満が関連しているかについても心エコー図検査から左房圧上昇を推定することの重要性と合わせて検討した。急性心不全の入院患者のうち、急性冠症候群、維持透析、肺動脈性肺高血圧症、肺動脈血栓塞栓症、非洞調律、僧帽弁手術後、ならびに2016年のAmerican Society of Echocardiography (ASE)/European Association of Cardiovascular Imaging (EACVI) ガイドラインの簡便なアルゴリズムを用いた左房圧上昇の推定でundetermined groupに該当する症例を除外した連続107例において、日本肥満学会の定める肥満に該当する体格指数 [体重(kg)/ 身長(m)2] 25以上の症例は27例であり、全体の25%を占めていた。このコホートにおいて、1年以内の再入院規定因子を変数増加ステップワイズ法による多変量ロジスティク回帰分析で解析した結果、体格指数は有意な規定因子とはならなかった。1年以内の再入院を規定する有意な因子として、ヘモグロビン低値(ヘモグロビン値; ハザード比 0.753)、心エコー指標による推定左房圧上昇(ハザード比7.568)、退院時レニン-アンジオテンシン-アルドステロン系阻害薬非処方(ハザード比5.397)が抽出された。非侵襲的な心エコー検査による簡便な左房圧上昇の推定が心不全患者の1年以内の再入院に対する最もハザード比(危険度)の高い規定因子であるという本研究の結果は、心不全パンデミックと称される現代社会において意義ある研究成果と考えられ、令和4年5月に開催される日本超音波医学会第95回学術集会で発表予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題の初年度である令和3年度は臨床情報解析から研究を開始し、現在継続中である。急性心不全患者における肥満症例の割合を調査し、繰り返す心不全再入院に肥満が関連しているか否かについても心エコー指標による推定左房圧上昇の重要性と合わせて検討した。体内に肺動脈圧を連続測定できるシステムを植え込んで遠隔モニタリングを行った結果心不全再入院率が低下したという報告が注目されており、本研究では非侵襲的な心エコー検査による推定左房圧上昇の意義と肥満を含めた他の因子の心不全再入院に対する重要性について解析を行った。急性心不全患者107例のコホートにおいて、体格指数 [体重(kg)/ 身長(m)2] 25以上の肥満症例は27例であり、全体の25%であった。変数増加ステップワイズ法による多変量ロジスティク回帰分析の結果、同コホートで体格指数は有意な因子として抽出されず、肥満は独立した再入院規定因子とはならなかった。1年以内の再入院規定因子として、ヘモグロビン低値、心エコー指標による推定左房圧上昇、退院時レニン-アンジオテンシン-アルドステロン系阻害薬非処方が同定され、特に心エコー指標による推定左房圧上昇は最もハザード比(危険度)の高い規定因子(ハザード比7.568)であった。2016年のAmerican Society of Echocardiography (ASE)/European Association of Cardiovascular Imaging (EACVI) ガイドラインの簡便なアルゴリズムを用いた心エコー指標による推定左房圧上昇の意義を示す重要な研究成果と考えられ、令和4年5月に開催される日本超音波医学会第95回学術集会で発表予定である。今後も陰性・陽性結果含めて肥満と心不全の関連に対する解析を継続予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
臨床情報解析をさらに発展させる。研究計画に掲げていたとおり、最新の知見に基づいて検討項目を細かく変更していきながら研究を施行する。心不全を左室収縮能保持性心不全 (Heart Failure with preserved Ejection Fraction: HFpEF)と左室収縮能の低下した心不全 (Heart Failure with reduced Ejection Fraction: HFrEF)に分け、それぞれの臨床像と肥満の関連について研究を進め、肥満型HFpEFと肥満型HFrEFの臨床特性を明らかにする。心不全治療薬については、新規治療薬を含めて入院前の服薬状況から入院中の治療薬、退院時の投薬内容まで詳細に解析する。退院日以降は、心不全による再入院の有無、心不全死の有無、非心臓死の有無を含めた経過・予後の解析も施行する。 さらに、エピジェネティックス研究、幹細胞研究へと発展させる。現在、micro RNAの発現様式とエピジェネティックな転写制御の関連が非常に注目されているものの、不明な点も多い。肥満型心不全 (肥満型HFpEFと肥満型HFrEF)のバイオマーカーとしての可能性、病態制御に関与している可能性のあるmicro RNAsおよび同microRNAの関与する標的シグナルについて検討する。それらの標的microRNAおよび標的シグナルの分子を過剰発現あるいはノックダウンさせた間葉系幹細胞の機能をマウスモデルで解析し、新規治療標的についても検討する。 未だ不明な点が多く複雑な病態である肥満型心不全の機序・修飾因子を解明し、新たな治療戦略へとつながる成果を得ることを目的として、これらの研究を継続する予定である。
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Causes of Carryover |
理由:令和3年度に使用予定であった消耗品購入費用や成果発表・論文作成関連費用の一部を令和4年度に変更としたため。 使用計画:令和3年度の使用予定としていた消耗品購入費用や成果発表・論文作成関連費用の一部を令和4年度に変更として使用予定であり、さらに研究を発展させる。
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