2022 Fiscal Year Research-status Report
早発性冠動脈疾患を発症する家族性高コレステロール血症の獲得免疫異常と遺伝子変異
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21K08117
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Research Institution | Tokyo Women's Medical University |
Principal Investigator |
佐藤 加代子 東京女子医科大学, 医学部, 准教授 (20246482)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山本 俊至 東京女子医科大学, 医学部, 教授 (20252851)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 家族性高コレステロール血症 / 早発性冠動脈疾患 / 遺伝子変異 / 動脈硬化 / 炎症 / サイトカイン / T細胞 / 接着分子 |
Outline of Annual Research Achievements |
心筋梗塞、不安定狭心症、心臓突然死を含む急性冠症候群に代表される心血管疾患は年々増加し、医療費も2倍となっている。家族性高コレステロール血症(FH)は、常染色体性優性遺伝型式の遺伝子疾患であり、著しい高LDLコレステロール血症を呈し、早発性冠動脈疾患を来たす。FHヘテロ接合体患者は日本に25万人程度いるにもかかわらず、診断率が1%未満と低く、遺伝的背景を有するFHによる早発性心血管疾患の病因・動脈硬化進展の病態解明につながる研究や早期治療、発症予防が十分になされているとは言えない。 本研究の目的は、①心血管リスクの高いFH患者の早期診断と重症度評価法を確立し、早期治療介入を行う。②FHの原因遺伝子と動脈硬化進展に関与する遺伝子の変異を解析し、③疾患特異的な動脈硬化進展機序を解明することである。 研究実施計画としては、①臨床および動脈硬化評価:臨床所見、血液生化学検査、放射線検査にて行い、②網羅的遺伝子解析:脂質関連遺伝子27種、動脈硬化・炎症関連遺伝子15種をTruSight OneシークエンスパネルTMを用いて次世代シークエンスで網羅的に解析する。③炎症・免疫異常と動脈硬化進展の解析:患者末梢血より単核球を単離し、T細胞、マクロファージ、炎症性サイトカインの解析、凍結保存血漿よりcirculating MV(cMV)、microRNA解析を行う。また、④組織病変との対比:カテーテル治療や手術症例より得た組織での検討、④FHモデルマウス(LRLR-/-)や動脈硬化モデルマウス(APOE-/-)を用いてヒトと同様のフェノタイプを呈しているのか検証する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
① FHおよびFH疑いで遺伝子解析に同意した349例に次世代シークエンサーによる遺伝子解析を行った。遺伝子解析によりFH疑い(FHs/o)の22例(15%)、FHの51例(26%)に遺伝子変異を認めた(HeFH)。遺伝子解析を行った全例では73例(21%)がHeFHと診断された。LDLR遺伝子変異22種、PCSK9遺伝子変異5種を認め、APOB遺伝子変異は認めなかった。また、心血管家族歴、T-cho、LDL-C、maxT-cho、maxLDL-C、ApoBはLDLR変異群で有意に高値であった。一方、PCSK9変異群ではLP(a)が高値(P=0.023)であった。 ② 臨床像の検討としては、320列冠動脈CTでの冠動脈病変の重症度scoreと頸動脈プラーク病変の重症度scoreは相関し、冠動脈疾患と関連の知られる大動脈弁石灰化がLDLR/PCSK-9変異を認めるFHで多く認められた。さらに、LP(a)がFHのMACE発症にどの程度関与しているのか調べた結果、LDL-C<70mg/dlに脂質がコントロールされていてもLP(a)値がcut off22mg/dl以上でMACE発症を多く認めた(P=0.008)。 ③ T細胞の検討では、FH患者は末梢血中のエフェクターメモリーT細胞と細胞障害性のあるエフェクターT細胞のうちIFNγ産生CD4 T細胞(Th1)、細胞障害性CD8 T細胞(CTL)が多く、血中ORAIP、酸化LDLが高値で両者は相関していた。また、冠動脈バイパス術後症例の冠動脈粥腫組織では、血管平滑筋細胞に酸化LDLとORAIPが陽性で、血管平滑筋細胞のアポトーシスが認められ、LDL-Cによる酸化ストレスが冠動脈粥腫不安定化に関与することが示唆された。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度までの研究結果を総括し不十分な点を踏まえ、以下の研究を継続して行う。 ① FHおよびFH疑い症例の遺伝子解析をさらに50例行い、FH関連遺伝子とABCG5/8、APOA5、LP(a)と動脈硬化性疾患の臨床像との関連を詳細に検討する。 ② 動脈硬化・炎症関連遺伝子の解析では、GPIIb/IIIa複合体、integrinαV/integrinβ3複合体(ビトロネクチンレセプター)を介してFHの急性冠症候群発症に関与している可能性が考えられるGPIIIa(integlinβ3,CD61)変異を詳細に検討する。GPIIIaは血小板以外にマクロファージ、内皮細胞、平滑筋細胞にも発現するため、FHで認めるMVで発現を調べ早発冠動脈疾患の発症に関与するのか臨床所見と対比する。さらに、凍結保存血漿よりcirculating MV(cMV)を単離し、cMVの由来やMV結合による標的細胞の炎症反応、細胞間コミュニケーション(p-selectins,integlins,CD40,AV等)を解析する。また、MVの構成成分であるmicroRNAに、FH特異的microRNAがあるかGeneChip miRNA Arrayで解析し、mRNA制御や動脈硬化進展と遺伝子変異との関連を解析する。 ③ 動脈硬化モデルマウスにおける動脈硬化病変進展と動脈硬化関連遺伝子変異についてトランスクリプトーム解析を引き続き行う。
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Causes of Carryover |
本年度繰越額と次年度交付額を合わせFH特異的microRNAがあるかGeneChip miRNA Array解析予定です。
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