2022 Fiscal Year Research-status Report
ミトコンドリア制御蛋白を介した心筋保護機構の解明および新規治療法の開発
Project/Area Number |
21K08134
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
遠藤 仁 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 講師 (50398608)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | ミトコンドリア / ドキソルビシン / フェロトーシス / GPX4 / 心毒性 |
Outline of Annual Research Achievements |
MARCH5は、ミトコンドリアに局在する多機能なユビキチンリガーゼで、ミトンドリアの品質管理や機能制御に重要な役割を担う。しかし、心臓における生理的な意義また病態形成への寄与については全く解明されていない。本研究では、MARCH5の心臓における病態生理学的役割をアントラサイクリン系抗癌剤DOXによる心筋傷害を軸に解明し、MARCH5活性制御による新たな治療法の開発を目指す。 心筋培養細胞では、DOXによってMARCH5の蛋白量が有意に低下した。MARCH5のsiRNA KDによっても心筋細胞死は誘導され、フェロトーシス阻害剤で選択的に救済できるため、MARCH5は心筋細胞をフェロトーシス細胞死から保護する役割があることが示された。MARCH5 KD細胞では過剰な過酸化脂質の蓄積がみられ、フェロトーシスの鍵分子GPX4の発現が著明に低下していた。同時に還元型グルタチオンGSHがMARCH5の低下に伴い減少しており、GSHを補充することでGPX4が回復したことからGSHはGPX4の発現を調整していると考えられた。 in vivoにおいても、野生型マウスにDOXを投与するとMARCH5およびGPX4の発現が低下した。MARCH5 inducible cardiac KO (icKO)マウスを作成したが、KOだけでは生存率や心機能にコントロールと差は見られなかった。MARCH5 icKOマウスにDOX投与を行なったところ、野生型に比べMARCH5 icKOマウスは脆弱性を示し、心機能の増悪が顕著であった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
in vitroでの実験系は樹立できており、MARCH5が心筋細胞のフェロトーシス細胞死に深く関与し、保護的に働いていることがloss of function, gain of functionの実験から明らかになった。フェロトーシスに関連する分子や過酸化脂質の挙動についても合理的な変化を示していた。GPX4の低下がGSHの低下によるものと考えられ、GSHを来すメカニズムを同定しつつある。 in vivoでもin vitroで観察されたMARCH5やGPX4の低下を確認できた。MARCH5のinducible KOマウスの作成に成功し、KOだけでは心臓や個体に表現型は確認できなかったが、DOX負荷による脆弱性の変化を確認できた。
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Strategy for Future Research Activity |
MARCH5がフェロトーシス細胞死にどのように影響しているのか分子メカニズムを今後さらに詳細に解析していく。特にMARCH5のE3リガーゼとしての標的分子を明らかにするため、研究プロトコルに挙げたTR-TUBEの実験系を樹立する。GSHが低下する要因としてChac1に注目している。in vitro, in vivoで関連を明確にしていく。 MARCH5 icKOマウスのDOXに対する脆弱性がフェロトーシスに由来するものか明確にする。フェロトーシス阻害薬の投与をin vivoで行いrescueできるか確かめる。 同時にMARCH5を活性化する分子の探索も行い、投与実験でドキソルビシンによる心機能障害・機能低下が改善するか評価する。
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Causes of Carryover |
消耗品や実験動物などを概ね計画通り購入し使用しており、次年度使用額はわずかであった。次年度も引き続き計画的な研究費使用に努める。
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