2022 Fiscal Year Research-status Report
ヒアルロン酸環境変化に伴う炎症性肺疾患難治化メカニズムと標的治療薬の検討
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21K08150
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
際本 拓未 筑波大学, 医学医療系, 講師 (80724773)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | HAS2 / 小胞体ストレス / IL-17 / COPD / 喘息 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、HAS2及びその生成物である高分子量ヒアルロン酸(HMW-HA)の異常が小胞体ストレス応答異常やTreg/Th17不均衡によりIL-17優位の病態を形成することで喘息やCOPDといった炎症性肺疾患の重症化・難治化病態および全身合併症を形成するメカニズムを、Has2+/-マウスを用いて解明することである。HAS2遺伝子は既に日本人の喘息感受性遺伝子として同定されており、疾患動物モデルで検証・病態を解明した成果により、HAS2異常を介した喘息発症・難治化の病態解明に貢献しうることが期待される。 計画2年目の2022年は、前年度に1) HAS2機能異常喘息病態において小胞体ストレス応答機能異常の有すること。 2) HAS2機能異常喘息病態における治療抵抗性および抗IL-17抗体治療感受性を有すること。の2点を見出したことより先行研究と併せ論文化したことを踏まえ(Front Immunol. 2022)、同様に小胞体ストレス応答機能異常の関与が示唆されるCOPDモデルでの検証を行った。その結果、豚膵エラスターゼ(PPE)投与モデルにおいて形態計測および気管支肺胞洗浄液中の炎症細胞分画の評価を実施したところ、Has2+/-マウスではPPE投与後に統計学的な有意差をもって、より重篤な気腫形成・気道炎症を認めた。組織学的に表現型に有意差を認めたことより、現在は検体の集積を行った後、RNA-seq解析および全身依存症重症化の有無の検証を実施する準備を進めている。可能であれば臨床データでの傍証が得られるかを検討する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2022年度については、前年度に先行研究と併せた成果報告については論文化していることから、別モデルの条件調整、病理組織学的な形態計測による表現型の確認、検体集積が主体であった、当初予定していたRNA-seq解析を完遂するまでには至らなかったが、形態計測上は仮説の通り定量的に有意差を得ており概ね順調に推移しているものと判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
計画3年目である2023年度は、これまでの成果を踏まえ、まず、PPEによる肺気腫モデルでのHAS2機能異常が病態に及ぼす影響についてはRNA-seq解析を用いて実施し、喘息モデルと同様の再現性があるかを検証する。可能であれば、エラスターゼモデル中の適切なタイムポイントを抽出し、小胞体ストレス応答等の異常の有無を抽出する。また、PPE投与モデルで骨密度低下が認められることが先行研究で知られているため、HAS2機能異常がさらなる増悪をもたらすかを検証する。
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Causes of Carryover |
前年度の研究については大部分が、COPDモデルの条件設定および病理組織学的な形態計測であったこと。当初計画していたRNA seq解析が検体採取に時間を要していたため2年目では完遂できず、予算の繰り越しを行ったこと。コロナ禍で、招待講演を除いては当初計画していた成果報告等の学会発表の旅費の使用機会がなくなったことにより余剰を生じた。研究自体は計画通り遅滞なく進んでおり、RNA seq解析等の解析、実験動物維持等で計画通り予算を使用し研究計画を遂行する見込みである。
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