2021 Fiscal Year Research-status Report
生体外増幅培養した血管内皮前駆細胞による肺高血圧症の血管内皮機能再生の試み
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21K08166
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Research Institution | Juntendo University |
Principal Investigator |
長岡 鉄太郎 順天堂大学, 医学部, 准教授 (70407295)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田中 里佳 順天堂大学, 医学部, 教授 (70509827)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 肺動脈性肺高血圧症 / 血管内皮前駆細胞 / 血管内皮細胞障害 / 生体外増幅培養法 / 血管内皮再生治療 |
Outline of Annual Research Achievements |
肺動脈性肺高血圧症(PAH)は、肺動脈内皮機能障害に伴う血管収縮やリモデリングによって病態が進展するが、発症の根源である内皮細胞障害を改善させる治療法は存在しない。末梢血中の血管内皮前駆細胞(EPC)は病的組織の血管再生・修復に貢献しており、EPC自家移植による虚血性病変に対する新規血管再生治療が注目されているが、PAHの病態におけるEPCの役割については未だ明らかでない。これまでのEPC治療の問題点として、投与されるEPCの“質と量”が十分でなかった点が挙げられる。近年、採取したEPCを含む単球系細胞(MNC)を機能を維持しつつ増加させる生体外増幅培養法(QQc)が開発され、より効果的な血管再生治療が可能となってきた。そこで、MNC-QQcを用いたEPC補充療法はPAHの血管内皮細胞を再生させる有効な新規治療になり得ると仮説をたて、本研究を計画した。 まず我々は、遠心分離法を用いてラット末梢血からMNCを回収し、rat stem cell factor・VEGF・thrombopoietin・IL-6・Flt3-ligandを含む幹細胞用mediumを用いて7日間生体外増幅培養した(MNC-QQc)。次にFACSを用いて、QQc後のMNCを構成する細胞成分を検証したところ、EPCとM2マクロファージがQQc後に増加していることを確認した。 次に、PAHラットに対するMNC-QQcの治療効果を検証した。VEGF受容体阻害薬と慢性低酸素曝露(10% O2)を用いてPAHモデルラットを作成し、ドナーラットから回収したMNC-QQcをPAHラットの頸静脈から投与した。MNC-QQcの効果は、PAH誘導刺激と同時に投与する抑制プロトコールと、PAHの確立後に投与する治療プロトコールに分けて検証したが、いずれにおいても、PAHモデルラットの右心圧の上昇と右室肥大が有意に改善した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
概要で示したように、PAHラットを用いた検証ではMNC-QQcによるPAH治療の有用性を示すことができた。引き続き、肺の病理標本を用いた血管リモデリングの評価や、GFPラットから回収したMNC-QQcを用いて投与細胞の定着部位も確認を行っている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、MNC-QQcの効果の発現メカニズムの検証として、EPCの細胞機能評価、EPCが有する血管内皮機能の評価、MNC-QQc投与に伴う血管内皮細胞機能の変化、などを確認する予定である。今後、研究の進行に遅延が生じた場合は、研究に関わる大学院生を増員することも検討する。
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Causes of Carryover |
当初の予定よりも試薬や抗体の使用量が少なかったため、本年度に使用予定の研究費の一部が、次年度に持ち越しとなった。
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