2023 Fiscal Year Research-status Report
Viral nucleic acid components-based mechanisms of RSV-induced asthma exacerbation and the strategy for controlling the pathogensis
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21K08168
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
芦野 滋 京都大学, オープンイノベーション機構, 特定講師 (10507221)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 気管支喘息 / ウイルス感染 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和5年度では、RSウイルス感染によって誘導される喘息の急性増悪モデルマウスの構築を試みた過程で、動物飼育環境が変更になったことで生じた性差を含めた気道過敏性、気道炎症、およびアレルゲン感受性やRSウイルス反応性、またRSウイルスのbatch差など、苦慮した点が生じていたが、条件検討を行い最適な条件を見出している。 喘息マウスの肺内 Th2サイトカインレベルや好酸球数が、RSウイルスを感染させたときに上昇したことから、喘息増悪メカニズムの一つとしてtype2免疫応答の増強が推察された。 そこで、免疫細胞であるTh2細胞およびILC2の活性化に注目し解析したところ、軽微ではあったが RSウイルス感染した喘息マウスでは数的あるいは機能的亢進が認められた。一方で、RSウイルス感染単独のマウスではtype2免疫応答は観察されなかった。これらのことから、喘息肺内でRSウイルス感染を起こす条件においてはtype2免疫の増強が起きる現象であることが推察された。さらに、TLR3KOマウスでは、これら一連のRSウイルスによる喘息増悪が部分的に消失することがわかった。すなわち、TLR3受容体のリガンド、dsRNA構造体様RSウイルスが感染時に形成されていた可能性がある。 また、RSウイルス感染の肺内では、上皮系サイトカイン (TSLP, IL-25, IL-33) のレベルが上昇するため、現在は、これらサイトカインを産生する気道上皮細胞とRSウイルス感染との関連を追究する評価系を構築している。気道上皮細胞はウイルス感染の最初の足場になるため、その細胞機能変化の解析が重要になる。その点を踏まえて、Th2サイトカイン環境下にある気道上皮細胞にRSウイルスが感染した場合に、喘息病態を増悪させるメカニズムがTLR3/dsRNA経路に一部依存する形で作動することを仮説におき今後の解析を進めていく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
喘息を引き起こしている肺内サイトカイン環境に依存して、RSウイルス感染がtype2免疫反応を増強させることがわかり、さらにその際の上皮系のサイトカイン群 (TSLP, IL-25, IL-33) の濃度が上昇する傾向にあることも確認された。令和5年度では、この喘息増悪反応は、TLR3KOマウスでは一部減弱する結果であったことも確認され、気道上皮細胞の機能変化にTLR3依存的なウイルス応答あるいは免疫応答が関わっていると推察された。 昨年度まで苦慮していた動物実験環境の変化による各種パラメーターの不安定さは克服されており、RSウイルスの喘息増悪メカニズム解析のために注力できる研究状況になっている。 現在、気道上皮細胞の機能変化の評価系の構築がやや遅れているが、TLR3KOマウスを用いて、TLR3依存的経路の存在の可能性が推察されたことで、責任分子群の同定に向けての解析に注力できるようになった点が予想よりも早く進んでおり、総合的におおむね順調に進展していると考えている。 今後、以上の解析作業に加えて、TLR3経路に依存した喘息増悪に関係する責任分子群の検出を試みていく予定であり、おおむねの研究目的が遂行可能であると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
RSウイルス感染が誘導する喘息増悪では、Th2サイトカイン環境でRSウイルスが感染することで引き起こされる気道上皮細胞の機能変化がキーポイントになっている可能性が推察される。この現象は、一部 TLR3経路に依存している可能性もあるため、TLR3を基軸とした解析を進めていきたいと考えている。このとき、Th2細胞やILC2等の免疫細胞群の機能解析も並行しておこなうことにも注力していく。 前年度に十分な着手ができていなかった項目の一つとして、気道上皮細胞の機能変化の評価系構築があるため、この実験にはin vitro、in vivo両面のアプローチで取り組んできたいと考えている。 また、昨年度に引き続き、RSウイルス感染が強く影響するTLR3発現細胞が何であるかを明らかにすることで (現在のところ気道上皮細胞を想定しているが、樹状細胞やマクロファージも考慮)、なぜtype2免疫を介して喘息病態を増悪させるかを解明していく。
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Causes of Carryover |
令和5年度は、マウス自家繁殖、ウイルス増幅および精製、titer測定がほぼルーティーンワークになり、新たな高額の実験試薬の購入が必要なくなった背景があったため、安価な物品消耗品代で実験を遂行することができた。また、学会参加の機会は数回あったが、多くの必要な専門情報はオンラインの学会参加や試薬会社提供のwebinarで少額あるいは無料で収集できたため、旅費の節約につながった事情もあった。 令和6年度は、新規の動物および細胞評価系、網羅的タンパク/遺伝子の評価系などを考慮しているため、その準備費用に充てていくことを考えている。
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