2022 Fiscal Year Research-status Report
重症COVID-19合併ARDS・マクロファージ活性化症候群の新規治療戦略の確立
Project/Area Number |
21K08172
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
漆山 博和 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (20725303)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
寺島 裕也 東京大学, 医学部附属病院, 客員研究員 (90538729)
佐藤 雅昭 東京大学, 医学部附属病院, 准教授 (00623109)
齋藤 朗 東京大学, 医学部附属病院, 講師 (90591412)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 炎症性サイトカイン / マクロファージ活性化症候群 / 肺気腫 / 間質性肺炎 |
Outline of Annual Research Achievements |
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、重症者ではサイトカインが過剰に産生され、強い炎症が全身で引き起こされるため、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)による呼吸不全や、マクロファージ活性化症候群(MAS)による肝障害や血球減少を引き起こし、時に多臓器不全から死亡に至るが、その機序は未知の部分が多い。 COVID-19の治療戦略には、ウイルス増殖抑制に加え、サイトカイン・ケモカインなどを放出する炎症細胞の活性化を阻害し、過剰な炎症を制御する必要があることがこれまでの臨床経験から判明しているが、現在広く用いられているステロイドなどの免疫抑制薬は、2次感染を誘発するため、直接的に免疫抑制作用を有しない新規治療戦略の確立が求められている。 本研究では、重症COVID-19の病態を直接的に反映すると考えられるARDS-MASマウスモデルに加え、重症COVID-19の基礎疾患の一つである肺気腫のモデルであるエラスターゼ気管内投与による肺気腫マウスモデルなどを用いて、それらに共通する炎症経路を特定し、COVID-19重症化に寄与する病態因子(サイトカイン・ケモカインなど)を明らかにすることことを目的とする。 動物モデルで候補となった病態因子は、実際のヒト肺においてどのように作用しているかを検証するため、肺移植時患者摘出肺を用いその発現の多寡を解析し、肺での持続炎症や治療抵抗性肺傷害の程度と関連が見られるか精査する。 動物モデルと実際の患者肺において、共に活性化している炎症経路を特定し、見出された病態因子が実際のヒト肺にてどのような役割を果たしているのかを解明し、治療標的となる経路を特定することで、重症COVID-19合併ARDS・マクロファージ活性化症候群の新規治療戦略の確立を目指す。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
ARDS-MASマウスモデルはその全身性炎症の再現性確保が難しく、マクロファージ遊走阻害がARDSに与える影響も評価が困難であった。COVID-19は流行株がオミクロン株になってからARDS-MASの様な全身性の強い炎症を引き起こすことが稀になり、臨床的意義が低下したため、やむなく検証を中断した。
エラスターゼ気管内投与肺気腫マウスモデルの作成において、気腫病変の再現性確保が想定以上に難しく、安定した気腫病変を作成し、マクロファージ遊走阻害が気腫病変に与える効果を検証できるようになるまでに想定以上の時間を要した。
上記の理由により研究開始時点での想定よりも進捗が遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
エラスターゼ気管内投与肺気腫マウスモデルにおいて、マクロファージ遊走阻害は肺コンプライアンスを維持している可能性を見出しており、エラスターゼ投与にて発現変動しているmRNAや炎症性サイトカインのうち、マクロファージ遊走阻害によって発現が変化しているmRNAやサイトカインを見出す。
間質性肺炎は、COVID-19感染における重症肺傷害の明らかな基礎疾患であることから、肺移植時に摘出された種々の間質性肺炎患者肺を用いて、マウスモデルにて見出したmRNAやサイトカインがどのように関与しているか検証し、初代培養細胞などを用いて遺伝子発現を調整することで病的意義を検証し、新規の治療標的となりうるか検証する。
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Causes of Carryover |
ARDS-MASマウスモデルや、エラスターゼ気管内投与肺気腫マウスモデルの作成において、病態形成の程度が当初期待していたものよりも少なく、不均一であったことから、モデル作成の条件検討が必要となり、以降の病態因子(サイトカインやケモカイン)の解析が予定通り行えなかった。また間質性肺炎患者肺のサンプリング数が当初の予定よりも少なかった。COVID-19流行株がオミクロン株主体となり、ARDS-MASのような重篤な全身炎症を引き起こすことが稀になり、ARDS-MASマウスモデルの研究意義が低下したため、研究計画の見直しが必要となった。このため次年度使用額が生じた。2023年度は、2022年度までに検証したマウスモデルや、収集した患者肺のサンプリング検体を用いて実験を行い、研究をより推進していく。
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