2022 Fiscal Year Research-status Report
単一細胞遺伝子発現解析の機械学習に基づく腫瘍進展中間段階の解明とモデル化
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21K08173
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
生島 弘彬 東京大学, 医学部附属病院, 届出研究員 (80719154)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 肺癌 / 単一細胞遺伝子発現解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
肺癌を含む上皮系悪性腫瘍の進行過程において、一般的に上皮間葉転換(上皮間葉移行)が重要な役割を果たしていることが知られている(Brabletz et al, Nature Reviews Cancer, 2018;18:128-34)。上皮間葉転換(上皮間葉移行)は、悪性腫瘍細胞の上皮層からの離脱、組織内浸潤、血管内への遊走、などの他、腫瘍原性や免疫寛容との関わりも報告されており、悪性腫瘍の進行過程の多段階に寄与していると考えられている(De Craene and Berx, Nature Reviews Cancer, 2013;13:97-110)。しかしながら、「転換」ないし「移行」と表現されるそのプロセスについて、中間段階は十分には捉えられてはおらず、細胞レベルでの転換過程の詳細や、細胞レベルで真に転換が行われているのか否かについては、結論は出ていない。その大きな理由は、腫瘍細胞をbulkの状態で検討しているためであり、bulk全体としては転換していることが確認できても、単一細胞レベルでの転換過程や中間段階を捉えることができていないためである。腫瘍細胞をbulkの状態で検討している段階では、細胞レベルで真に転換が行われている可能性の他に、heterogeneousな腫瘍細胞集団の配分の変化の可能性を否定しきれない。 本研究課題は、細胞レベルでの(すなわち、集団内の構成配分変化だけではない)上皮間葉転換の詳細を明らかにするために、単一細胞遺伝子発現解析の技術を用いて、上皮間葉転換の中間段階の実態を捉え、さらにそこに機械学習を組み合わせることで、時系列データの再現とモデル化を試みるものである。その基盤として、昨年度には、正常肺組織の単一細胞遺伝子発現解析データを基に、集団内の構成配分変化だけではない上皮間葉転換の機械学習モデルを構築した。本年度には、その機械学習モデルを腫瘍細胞に適応し、腫瘍細胞集団における上皮間葉転換のプロファイルを解析した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度に構築した、正常肺組織の単一細胞遺伝子発現解析データを基にした集団内の構成配分変化だけではない上皮間葉転換の機械学習モデルを用い、以下の解析を行った。具体的には、腫瘍細胞集団の遺伝子発現プロファイルをそのモデルの入力データとして用い、上皮/間葉の遷移を、それぞれのステータスへの存在確率として表現した。さらに、そのデータを、患者の予後データとリンクさせ、各ステータスへの存在確率と予後の関係を解析した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後、同モデルを単一腫瘍細胞遺伝子発現データに適応し、細胞集団レベルではなく、単一細胞レベルでの解析を行う。細胞集団に対して、上皮/間葉の遷移をそれぞれのステータスへの存在確率として表現する解析を行ったが、同様の解析を単一細胞の解析へと拡張する。
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Causes of Carryover |
端数の残額が生じたため、次年度の消耗品等の経費に充当する予定である
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