2023 Fiscal Year Annual Research Report
腫瘍微小環境の低酸素曝露上皮間葉転換におけるアシドーシスの役割とその制御
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21K08189
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Research Institution | Tokyo Medical University |
Principal Investigator |
青柴 和徹 東京医科大学, 医学部, 教授 (60231776)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 肺癌 / 低酸素 / アシドーシス / E-カドヘリン |
Outline of Annual Research Achievements |
低酸素環境における酸性化(アシドーシス)が肺癌細胞の浸潤と転移に与える影響を明らかにするために、上皮間葉転換 (Epithelial mesenchymal transition: EMT)に対する影響を検討した。肺癌細胞を低酸素(1%O2)に曝露するとEMTが亢進したが、解糖系亢進による培養液の酸性化 (pH 6.8) を中和(pH 7.6)すると低酸素によるEMTがほぼ完全に抑制された。さらに低酸素下ではEMTを防止するE-カドヘリンの蛋白量が減少したが、酸性培養液を中和するとその減少が抑制された。その原因として低酸素による酸性条件下では、E-カドヘリンのmRNA量が減少するとともに、E-カドヘリン蛋白の分解が促進されることが明らかになった。その機序として、低酸素による酸性条件下ではE-カドヘリン蛋白のユビキチン化の亢進が見出された。しかしながらプロテアソーム阻害薬の存在下においてもE-カドヘリンの分解が抑制されなかったことから、低酸素酸性条件下におけるE-カドヘリン蛋白の分解亢進はプロテアソーム系ではなく、ライソゾーム系による分解処理を介しているものと考えられた。さらに低酸素下においては肺癌細胞のマイトファジー亢進によりミトコンドリアの分解が亢進したが、ライソゾーム機能を抑制するアジスロマイシンを投与するとマイトファジーが抑制され、低酸素曝露下の肺癌細胞がアポトーシスにより死滅することも明らかになった。また脂質異常症治療薬であるフェノフィブラートは、ペルオキシソーム増殖薬活性化受容体-α(PPARα)、aryl hydrocarbon receptor (AhR)、nuclear factor-erythroid 2-related factor 2 (Nrf2)の活性化を介してシスプラチンに対する薬剤抵抗性を亢進させることも明らかになった。
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