2022 Fiscal Year Research-status Report
Identification of cancer antigen-specific autoantibodies in lung cancer
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21K08190
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
清水 哲男 日本大学, 医学部, 准教授 (00339326)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中川 喜子 日本大学, 医学部, 助教 (10839228)
権 寧博 日本大学, 医学部, 教授 (80339316)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | がん抗原特異的自己抗体 / がん免疫療法 / 免疫関連有害事象 |
Outline of Annual Research Achievements |
がん免疫療法を行う進行肺癌患者の治療前と治療後の血清を採取し、プロテインアレイを用いて網羅的に患者血清中の自己抗体を検出した。この自己抗体の中からがん抗原特異的自己抗体を抽出し、がん免疫療法が奏効した患者群(奏効群)と奏効しなかった患者群(非奏効群)でがん抗原特異的自己抗体の発現変動を解析した。また、治療前と治療後においても発現変動が見られないか検討した。2群間で発現上昇もしくは発現低下した自己抗体を抽出し統計学的検定を行ない、階層型クラスタリング解析、GO解析(GO slim)、Pathway解析を行なった。以上の統計学的解析から、がん免疫療法の治療効果予測となるバイオマーカーの候補となるがん抗原特異的自己抗体を十数個選定した。さらに、がん免疫療法の副作用(免疫関連有害事象)について、中等度以上の有害事象が発生した患者群(irAE群)とそれ以外の患者群(non-irAE群)で患者血清中の自己抗体の発現変動を比較し、がん免疫療法の副作用(免疫関連有害事象)予測となるバイオマーカーの候補となる自己抗体を十数個選定した。がん免疫療法の治療効果と副作用予測となるバイオマーカー候補の自己抗体に対して、これら自己抗体の血液中濃度を定量的に測定するため自己抗体測定のELISAを制作した。自己抗原にヒスチジンTagを付加したリコンビナント蛋白をELISAプレートに固層化し、それぞれの自己抗原の固層化に最適な濃度、ブロッキング方法、血清希釈率等の最適化の検討を行なった。 また、解析する患者数を増やすため本臨床研究の登録参加者のリクルートを進め、現在296名の患者血清が採取できている。これらの患者における治療効果 (奏効度や無増悪生存期間、全生存期間)や副作用(免疫関連有害事象)などのデータベースを構築している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は人を対象とした臨床研究であり、研究代表者が所属する研究機関の附属病院における臨床研究倫理審査委員会で本研究計画は承認されている。対象はがん免疫療法(免疫チェックポイント阻害薬)施行予定の進行肺癌患者であり、目標患者数は当初100名であったが、がん免疫療法の治療効果予測となるバイオマーカーの候補が増えたため目標患者数を300名に変更した。現在、296名の被験者が登録されており患者血清の採取ができている。 本研究はPhase Iとして自己抗体のプロファイル解析と候補の選定が行われた。20,000以上のタンパク質を固層化(ヒトプロテオームの約80%を網羅)したプロテインアレイ(HuProtTM Human Proteome Microarray v3.1)を用いて、患者血清中の自己抗体を網羅的に検出した。この自己抗体の中からがん抗原特異的自己抗体を抽出し、がん免疫療法の治療効果予測となるバイオマーカーの候補となるがん抗原特異的自己抗体を十数個選定した。さらに、がん免疫療法の副作用(免疫関連有害事象)の発症予測となるバイオマーカーについてもバイオマーカーの候補となる自己抗体を十数個選定した。 がん免疫療法の治療効果と副作用予測となるバイオマーカーについてはPhase Iは終了し、Phase II (ELISAによる自己抗体定量法の確立)についても治療効果予測のバイオマーカーについては終了し、副作用予測のバイオマーカーについては自己抗体測定のELISAを制作している。治療効果予測のバイオマーカーに対して、現在Phase III(治療効果予測可能な自己抗体の検証)の解析を進めている。 目標の約98%の被験者が登録されており、Phase IIIまで予定している研究がPhase IIIまで進んでいるため、進捗状況は概ね順調に進展しているとした。
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Strategy for Future Research Activity |
Phase Iで選定したがん免疫療法の治療効果予測となるバイオマーカーの候補となるがん抗原特異的自己抗体について、Phase IIで作成したELISAを用いて300名の治療前と治療後の患者血清で自己抗体の定量的解析を行う。 Phase IIIとして治療効果予測可能な自己抗体の検証を行う。Phase IIで確立したELISAにより自己抗体を定量し、がん免疫療法の治療効果(奏効率、無増悪生存期間、全生存期間)との関係について検討する。ROC曲線を作成し、がん免疫療法の治療効果予測の最適な自己抗体を同定する。同定した最適ながん抗原特異的自己抗体に対応するがん抗原について、免疫組織化学法を用いて肺癌組織における発現を検討する。また、血清中がん抗原の濃度も測定し生体内における役割について検討を行う。がん免疫療法の副作用(免疫関連有害事象)の発症予測となるバイオマーカーについても、Phase IIまでで得られた結果をもとにして候補となる自己抗体に対してPhase IIIとして副作用予測可能な自己抗体の検証を行う。自己抗体の出現や産生量の変化の免疫学的背景を検証するため、ELISA法を用いて患者血清中のサイトカイン(TNF-α、IL-1β、IL-2、IL-4、IL-6、VEGFR-2、VEGF-A、VEGF-D、IL-10、TGF-β等)とフローサイトメトリー法を用いて患者血液中のリンパ球サブセット(制御性B細胞、制御性T細胞等)を測定する。
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