2023 Fiscal Year Annual Research Report
ユニバーサルインフルエンザワクチンの実用化に向けたヒト交差防御抗体の性状解析
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21K08192
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Research Institution | National Institute of Infectious Diseases |
Principal Investigator |
安達 悠 国立感染症研究所, 治療薬・ワクチン開発研究センター, 主任研究官 (40749016)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 交差防御抗体 / インフルエンザウイルス |
Outline of Annual Research Achievements |
インフルエンザウイルスの抗原変異にも対応可能な“交差防御抗体”の誘導を目的とした所謂ユニバーサルワクチンの実用化が世界的に求められている。我々はこれまで蓄積した免疫学的データから着想を得て、新規ユニバーサルワクチン抗原の開発に成功している。本研究では、提案する新規ワクチンの科学的基盤の整備に向け、新規ワクチン接種により主に誘導される”LAH抗体レパトア” に焦点を当て、その性状を解明することを目的としている。 本年度は、LAH抗体レパトアの抗原結合様式を解明するために、インフルエンザgroup1/2に広域な交差結合性を示すヒト抗体クローン”LAH31”の構造解析を行った。その結果、LAH31抗体は膜融合型HA構造にのみ存在する抗原構造を認識するユニークな抗体クローンであることが明らかとなった。取得したLAH31抗体とHA抗原の構造データおよびHA抗原の保存性から、交差性獲得には抗体軽鎖への変異挿入が重要であると考えられたため、抗体軽鎖を変異挿入前(germ-line型)へと戻して結合性を確認した。その結果、軽鎖germ-line型抗体では主にgroup1株HAへの結合性が減少した。 さらにLAH31抗体遺伝子への変異挿入による交差性獲得について詳細に検証するために、抗体軽鎖の変異をひとつずつgerm-line型のアミノ酸に戻した変異型モノクローナル抗体を作製して結合性を評価した。その結果、LAH31抗体軽鎖における変異の中でgroup1交差結合性の獲得において重要なアミノ酸変異を同定した。 これらの結果から、新規ワクチン接種によりLAH抗体遺伝子への変異挿入が促進されることで広域な交差結合性を獲得し、変異株へのワクチン有効性が増強される可能性が考えられた。
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